私の恋活ダイアリー



イスラエルのテルアビブに暮らす60代の女性映画監督がインターネットの「恋活」サイトを利用して男性パートナーを探す様を自身でまとめたドキュメンタリー、原題は「Sixty and the City」…って面白そうじゃんと思いきや、そう面白くなかった。彼女がこれまでどういう映画を撮ってきたのか見たくなった(笑)


オープニングは、赤い肩紐のキャミソールと赤いふちのメガネで街をゆく監督ニリの姿。ブロンドの長髪と、おそろしく細長い脚が目を引く。冒頭、アドバイスを求めた友人に「その年でミニ(スカート)は痛い」「マニキュアをしなきゃ」と言われて一度や二度はその通りにしてみるも、結局は脚を出し、「庭仕事に向かない」マニキュアはしないというのがいい(服を買い替えるのが面倒なのではという気もする)。「一般受け」も気になるけど自分の好きにしたい、そのへんが入り混じるのがまっとうだと思う。


「自分で自分(の映画)を撮っている」という点にそそられたんだけど、その要素にあまり奥行が無いのがつまらなかったゆえん。最後に「80人とデートした」ことを明かすもそれまでは撮らせてくれた男性を順に追ってゆく感じや、キスの後の「ベッド」の省略の仕方など、手際が良く何も見えない。防空壕を改装した地下室で「Killing me softly」を歌う男性を撮りながらの「撮影しながらこんなに熱くなったのは初めて」なんて言葉や、作中最後にひと時を過ごす男性のくだりで初めて「映像使用許可」のサインをもらう場面は(なぜここにそれを挿入したのかと考えさせられ)面白かったけども。


会ったこともないのにメールでプロポーズしておきながら、初対面時に「相手を探してはいない」「君はこれこれこういう人間だ」と一方的に話をしてくる男性とのデートの場面に、上手く言えないけど、「頑なな人間」に触れた時の恐怖が蘇った。そういうのってドキュメンタリーの醍醐味だ。こうして考えるに、「主役」である監督自身が、私からして、全然嫌なところのない人なんだけど見ていてそう面白い人でもないというのが、楽しめなかった原因かな。


カメラに向かって、自分の若い頃の写真を顔の前に次々と掲げてゆくシーンにはどきっとさせられた(でもああいう「仕掛け」は一つの映画の中ではそうそう使えないものね)。「老いの悲しさ」を愚痴るこういう要素があっても、大してしみったれておらず、男も女も無い感じがするところが良かった。いわく、誰だってより「若くてリッチで健康」な方を好む。一人の女性の見ている世界に過ぎないとはいえ、日本よりも随分「自由」な感じがしていいなと思った。