パーフェクト・センス




「人々は二つに分かれた
 (略)
 世界が終わると考える者と、人生は続くと考える者」


武蔵野館にて公開初日に観賞。都内唯一の上映館ということもあってか、ほぼ満席。


それは「嗅覚」から始まった。何の前触れもなく人類が感覚を失っていく中、二人は愛し合う。主演にユアン・マクレガーエヴァ・グリーン


全篇通して、医師であるエヴァのナレーションが延々と続く。冒頭まず「この世にある全てのもの」の例として、「レストラン」などと並んで「病気」という言葉が出てくる。つまり「病気」の話じゃないわけだ。「病気」はこの世に「非・病気」が存在しなければ成立しない。これはこの世の「変化」とその渦中の二人の物語。ある朝、目覚めたエヴァが陽の差し込む窓際に立ち「世界はまだ続いてるわ/皆が出勤してる」と言うのが印象的だった。


変化につれて、人々も変わる。皆が嗅覚や味覚を失った世において、レストランは新たな工夫をし、客の方もこれまでと違うものを求めてやってくるようになる。アーティストは「以前は持っていたが失ったもの」をネタにし、宗教家は「天罰だ」「信心で治る」と叫び回る。
ユアンエヴァはいわば「中庸」である。もともと「嗅覚」や「聴覚」を持っており、シェフと感染症専門医という、(映画的に)致命的なダメージではなく適度な刺激を受ける職業に就いている。ちなみに「ミュージシャンなんかはどうしてるんだろう」と考えた途端、ライブハウスにおけるとある場面が挿入されるので驚いた(笑)
正直なところ、始めから「障害」を持つ者や、その他、「味覚を失う前に異常な食欲に襲われる」としたら、例えば摂食障害に罹ってる者はどうしてるんだろう、と思わずにはいられなかった。二人の物語なんだし、そこまで描く必要ないと分かっちゃいるんだけども。「感覚を失う前に全員がとある感情に襲われる」という設定にも、「感情」とはそういうものなんだろうか?と疑問に思った。何にせよ一律すぎるというか。
終盤さすがにナレーションに対し「勝手にまとめすぎだろ」と思い始めた頃、ラストのとある場面に「驚き」「喜び」に近い感情が生まれ、その後、違った衝撃を受けて終わる。


エヴァが住むのはそこそこ裕福な町、その近くのレストランに勤めるユアンは渡し舟で通っている。エヴァのワーゲンに対し、ユアンの移動手段は自転車。愛車の感じと自宅の様子から、自転車が趣味でもあることが分かる。片方折った裾が可愛い(笑)
煙草を切っ掛けに…ユアンが切っ掛けに使い(笑)知り合った二人が、二度目に会うのは彼の厨房。シェフの作ったものをその場で鍋から食べるなんて羨ましい限り。「食べ物」といえば、撮影用に一体何で作ったんだろう?と思わせられる場面が多数あった。「石鹸」に「オリーブオイル」…「花」は本物かな?もしエキストラとして参加するなら、そのへんのものをむちゃくちゃにむさぼる集団の一人がいい!


作中、二人は何度も裸になる。ユアンの生尻もエヴァのおっぱいもあり。ベッドに寝てる時には構わず胸をさらしてるのに、座る時には頑なに布切れで覆ってるのは、その方が(何かで胸を支えた方が)体が楽だから、と実際問題として私は思うけど、ほんとのところは分からない(笑)