ゴーストライター


ヒューマントラストシネマ有楽町にて。公開3週目にして満席。とても面白かった。



冒頭、役名「ゴースト」のユアン・マクレガーが出版社に面接に行く場面からわくわくさせられる。隣にはくだけた姿勢でソファに沈む調子のいい代理人。「(売りは)ないです」でスベるも仕事の速さと「ハート」をアピールするユアン。最後に「ハートだぞ!」とこちらをのぞきこむ編集長のアップが不気味。力加減も考えも噛み合っていなさそうな社主と編集長のコンビの、何かありげな感じがいい。
その後、舞台はアメリカのとある孤島に。クラシカルな音楽も手伝って、なんだかすごく懐かしい、昔っぽい感じがする。これぞ映画!という感じのカットがかっちり丁寧に積み重ねられていく。ユアンの後頭部〜肩をなめて他の人物の動きを捉えた映像が多く、起きていることがよく分かる。ポランスキーの映画って、「こっちこっち!」「→」とばかりに奥で何かやってる人を捉えた画が多いような気がする。


ユアンの主演により、私にとって本作の面白さは100倍増になっている。大したことないコメントを作ったことでオリヴィア・ウィリアムズ演じる夫人に「あなたも共犯よ」と言われ、弁護士との会合の場に出る。テレビの前に座っていると皆がニュースを観るというのでどくはめになり、ソファの肘掛に腰を下ろす。この場面をやらせたら、ユアンは死ぬまで世界一だろう。
フェリーの二階から怪しい男たちを見下ろす表情、前任者の荷物が残る部屋で手を股間に挟んで座る姿。「フィリップ・モリス」ほどじゃないけど、あの年でセーターの袖が長いのが似合う可愛コちゃんぶりもすごい、眼福だ。
掃除夫に押し付けられた帽子と手袋を使うはめになり、匂いを嗅いで顔をしかめる。笑っちゃうシーンだけど、ゴーストなりに生意気にも!不愉快さを感じることもあるというか、ああいう場面っていい。


前首相を演じるピアース・ブロスナンもはまっている。同じ「英国人」でありながら、「ゴースト」と似ているところもあれば、違うところもある。ユアンいわく「オリンピックにでも出るのか?」というほど運動に精を出し、汗だくのトレーニングウェアのまま、セロリを刺した野菜ジュース片手に登場する(弁護士の前では着替える)。自家用機の中で二人が対峙するシーンの面白いこと。


孤島が舞台なので飛行機やフェリーがしょっちゅう出てくるのもいい。始めの方の「飛行機が雲の中をゆく」カットには気が抜けたけど、それ以外の飛行機・フェリーはどれも素晴らしかった。