神々と男たち



「お前たちは神々だが、人間として死ぬだろう」


実話を元に制作。アルジェリアの山間に暮らす、8人のフランス人修道士。96年、内戦の激化によりその身は危ういものとなる。残るべきか否か、彼らは思い悩む。



とても面白かった。冒頭の文章は、映画の始めに示される旧約聖書詩篇の文句。まさにその通りの物語が、美しく描き出されていた。具体的な何らかの宗教についての話という感じではない。人は神を内包しているかもしれないが、死を感じた時には、それぞれの思いを抱き、それぞれの行動に出る。それが「人間」なのだ。


前半は、修道士たちの日常の一場面が丁寧に積み重ねられていく。祈りや労働に加え、医療行為などの奉仕活動を行い、村に溶け込んでいる。修道院での食事や後片付け、各々の質素な部屋の様子なども楽しく、この時期ちょっとした「節電キャンペーン映画」のよう(笑)はちみつの瓶のラベルが可愛い。
彼らを頼って修道院を訪れるのは女性ばかり、「あなた方は枝、私たちはそれにとまる鳥」と言われるほど信頼されている。男たちとは交流がないわけではなく、修道院長のクリスチャン(ランベール・ウィルソン)は自らコーランを学び、地元のイスラム教徒の会合にも出席している。この場面では、別室に「女たち」だけが集っている様子も映されるが、字幕はない。雄弁な表情から「お喋り」であることが分かる。
彼らが住まう修道院は、終盤になって初めてその全体像を現す。爆音と共に下りてくるヘリコプターとの対比は、陳腐な例えだけど、捕食者とその獲物のようだ。


主役であるランベール・ウィルソンの美しいこと!武装集団に対峙する時の青年のような瞳の輝き、「最後の晩餐」での心底からの笑顔、その後の表情の変化。羊を追って笑ったり、水辺で頭を垂れて祈ったり、小さな書き物机で万年筆を走らせたり、全ての場面が素晴らしい。もっとも修道士の格好が、白シャツに黒いセーター肩掛けしてるように見えちゃうこともあったけど(笑・そういう役柄のイメージが強いもんだから)
彼の思索や文章の内容、また修道士たちがテーブルを囲み、自分たちの今後について議論を交わす場面など、いかにもフランスらしいなと思った。


作中「フランスの女性記者が取材を申し込んできたが、どうしたものか」「記者は『希望』になんて興味ないさ」というやりとりがあったけど、実際何らかの取材ってあったのかな?


ちなみにシネスイッチにて観賞時、上映事故により、冒頭、修道士の一人が薬を探す場面まで音が出ず。タイトルあたりでおかしいな、伝えに行こうかなと気が散ったため、ランベールの初登場シーン(と思われる)を見逃してしまった。残念。



「私たちの使命は共に生きること
 死からは、ぎりぎりまでそれを避ける努力をするのだ」