フィリップ、きみを愛してる!


試写会にて観賞。公開は3月13日より。




「僕らはまるで、愛の道化だね…でも君となら悪くない」


交通事故を切っ掛けに自分らしく生きる決意をしたスティーヴン・ラッセル(ジム・キャリー)は、妻子と別れ「ゲイの暮らし」を満喫。しかし金のために詐欺を重ねて逮捕される。刑務所でフィリップ・モリスユアン・マクレガー)と出会い熱烈な恋に落ちるが、共に釈放され自由の身になっても詐欺を止めることはできなかった。


病床のスティーヴンのナレーションで物語が始まる。彼の振り返る人生の内容も、その語り方も、時系列順でありながら、かなりとっ散らかっている。悪い意味でなく、スティーヴンってそういう人間なのだ。思考があちこち飛び回る様に、自分と似たものを感じて憎めなかった(笑)
チラシや予告編では、彼が働く詐欺のあれこれが整然と紹介されてるけど、作中ではそれらはごちゃごちゃした物語のピースに過ぎない。スティーヴン本人にも「華麗な詐欺師」という自覚はないだろう。弁護士と偽って裁判に勝った際に見せるはしゃぎぶりが笑える。
彼には「兄弟の中で一人だけ養子に出され」「成長後名乗り出ても邪険にされた」という過去がある。その問題は、解決したようで、忘れた頃にふと顔を出す。



冒頭、スティーヴンがゲイであることが観客に明かされるシーンから、クライマックスの大きな「仕掛け」まで、作中ではその場限りのミスディレクション(と言うのかな?)が多用される。
そのほとんどは、語り手であるスティーヴンが観客(+その他)に仕掛けるカタチなんだけど、唯一彼がだまされる場面…ユアン演じる「金髪で青い目のゲイ」フィリップの性分が明らかになる場面が可笑しい。スティーヴンとフィリップが初めて言葉を交わすのは、彼がエイズに罹った友人のために不慣れな法律書に挑もうとしていた時(だからスティーヴンは弁護士を装うことになる)。なんて優しいやつ。しかし実は、この可憐なフィリップは、周囲に血の雨が降ろうとも「自分と自分の好きな人の幸せ」だけを願うタイプなのだ。中盤、大騒ぎの牢の外を尻目に二人だけの世界に浸る場面が可笑しい。作中のユアンは、話し方や仕草によるパッと見の可愛らしさ、その下にある頑固さや単純さ、全てを常に湛えており、最高に魅力的だ。


ティーヴンの元妻デビーは、何かというと「主の御心」、他人の心の機微にはお構いなしという(「ゲイだからあんなことしたんじゃないかしら」って・笑)うざいことこの上ない女だけど、同時に私の好きな類の強さを持っている。一大事を「え〜そうなの!」で済ませ、その後は普通にしていられる。演じているのがレスリー・マンなので、とても可愛らしく映る。


ロドリゴ・サントロ演じる「愛人」はいかにも金のかかりそうな様子だったけど、「一緒にいたい」と願うだけのフィリップにもスティーヴンは同じように金を掛ける。フィリップはちゃんと享受する。もらえるものはもらう、まあそんなものだ(笑)