Mr.ブルックス〜完璧なる殺人鬼


オープニングののんびりしたBGMに楽しそうだな〜と思ったら期待通りで、こんなに面白い殺人鬼ものは久しぶり。もっとも(サイコ)ホラーが好きじゃない私の感想なので、そういうのを期待して観るとがっかりするかも。以下ネタばれ?あります。



内容は、一人の男が「殺人鬼」であるがゆえの厄介事の対処に追われる数日間を描いたもの。何もかもが大仰でなく観易い。展開も、他の映画ではあまり見ない例が多いけど、普通に考えたらこうかもなあ、というかんじで、全て辻褄が合っており納得できる。ラストのデ・パルマを普通っぽく?した(でも意義のある)オチも笑える。


実業家ブルックスケビン・コスナー)の趣味は人殺し。妻と娘を愛する彼は依存症の会に出席し衝動を抑えていたが、2年ぶりについ殺人を犯してしまう。しかしミスがもとで現場近くの男につきまとわれるはめに。いっぽう警察では、仕事を生きがいにする女刑事(デミ・ムーア)が精力的に事件を追っていた。


冒頭なぜか「エンゼル・ハート」のミッキー・ロークを思い出したんだけど、ケビン・コスナーが彼にしか見えていない男(ウィリアム・ハート)と会話を始めるあたりで全然違うな…と目が覚める。「当人にしか見えない人間」ってシリアスな設定だと思うんだけど、この映画のそれはすごくあっけらかんとしていて、ほんとに「居る」だけ。ラスト近くの「手柄を取られて悔しいだろう?」「いや、そんなことはない」という会話など、やっぱりただの話相手じゃん、と笑ってしまった。


ちょっとしたアクセントになっているアクションシーンはほぼデミ・ムーアの役目。銃がお供なのは勿論、大の字でふっとんだり、普通に喋りながら頭皮を縫われたりと、どれも面白い。資産家の父を持つ彼女は離婚調廷中で、ダンナに大金を要求され怒り心頭なんだけど、このダンナを始めデミ側の弁護士など周囲の皆のルックスが面白く、調廷シーンなど何てことないんだけど見ごたえがある。
私としては話が進むにつれ、ケビンにもデミにも肩入れしてしまっていたので、どちらも傷つかずに終わり嬉しかった。二人の間にはラストにちょっとした会話があるだけだけど、「車に轢かれて死ね」がかぶったりするあたり、センスがよくて可笑しい。


少し話がずれるけど、ケビン・コスナーが娘の秘密を知り「ちゃんと話を聞いてやればよかった、『妊娠だけが理由じゃない』と言ってたのに…」と後悔するシーン。ここ一か月くらい、モーガン・スパーロックの「30デイズ」(asin:B000FA4WLI)をちょこちょこ観てるんだけど、「ニューエイジ体験」の回で、コーチの女性が体験者に向かって言っていた言葉を思い出した。「身近な相手の話ほど最後まで聞かないことが多い。相手を知っているから、先を読んでしまうの」。ちょっと異なる例だけど、確かにそうだなあと思う。