道 白磁の人



日韓併合後の朝鮮で活躍した日本人林業技師・浅川巧の半生を描く。予告編からはのっぺりしたイメージを受けてたけど、テンポがよくて面白かった。


実在の人物とのことだけど、私は彼について全く知らなかった。本作には難しい状況下での巧(吉沢悠)と朝鮮人チョンソム(ペ・スビン)の友情、「木を植える」ことへの熱情、また現地で出会った「白磁」への愛着などが描かれる。巧は、彼同様に白磁を愛する兄やその友人から「白磁のような人」と言われる。美しくも実生活に根付き、二束三文で売られているもの。


冒頭、朝鮮にやって来た巧は見るもの全てにきょろきょろし、兄宅に着くと、机と盆が一体になったような家具(本作によると「一体型」が朝鮮文化の特徴だそう)の美しさに気を取られて徳利を引っくり返す。こうした漫画チックな場面の連続により、彼のバカ正直ならぬバカいい人とでもいうようなキャラクターと、この映画はこういう(いわゆる「ベタ」な)映画なのだということが分かる。そういうのが鼻についちゃう場合もあるけど、嫌な感じはしない。吉沢悠がはまっているし、老けメイクほとんど無しのキャストにより、たったか話が進んでいくリズムが気持ちいい。


巧とチョンソムは互いにそう遠くない処に居を構え、家族と暮らしている。それぞれの、死因は違うけれども「お葬式」や、子どもの誕生を祝う様子などから、日本と朝鮮の文化の違いを知ることができる。自分の子ども、あるいは相手の子どもが産まれた時の思いはどちらも一緒だが、「政治的」な出来事が起こると、二人の気持ちはすれ違う。すれ違った気持ちが、時を経てまた重なることもある。そして最後には、日本人である巧の棺は朝鮮人によってかつがれる。


オープニング、巧と故郷の友人とのやりとりから、女性の権利がまだ無い時代であることが分かる。彼を慕い朝鮮にやってくる妻の、特に何するわけでもない「妻である」だけの佇まい、演じる女優さんの普通っぽさがよかった。巧が彼女を迎える「ようこそ」が朝鮮語であることから、彼が郷に入れば〜というタイプであることが分かる。
後妻役の酒井若菜は登場時あまりにも(現代ものにおける)彼女のままなのでびっくりしていたら、「進歩的」な役なのでそれでいいようだ(笑)その他、田中要次の「ある意味〜」なんてセリフも「今」のまま。それも悪くなかった。