
EUフィルムデーズにて観賞、2023年ポーランド、キンガ・デンプスカ監督作品。ヤクプ・マウェッキによる同名小説の映画化。
冒頭のナレーションで主人公のナストカいわく「私達は共に体が望まないことをしてる、でもそれが人生じゃない?」。脳性麻痺を患う彼女はこの社会において、姉ウツィアは自身が選んだバレエの世界において、どちらも「そのまま」では存在が難しく体が悲鳴を上げるような努力を続けている。同じく今年見た女性監督(アンバー・シーリー)による『わたしの心のなか』(2024年アメリカ)が皆と同じ言葉を使えない辛苦と主人公の境遇は「あなた(私)達の問題」だということを訴えていたなら、症状も時代も環境も異なるこちらは体を使うこと、もっと言うならダンスの映画である。ナストカは当初「パパとママがダンスを好きなのは自分以外になれるからじゃないかな」と語るが、映画の終わりには皆、皆自身を踊るようになる。彼女もベランダで踊ってみる。
ナストカは世の厳しさも分かっていながら世界を優しいものとして語る。ただし母が帝王切開を望んだのに聞き入れてもらえなかったのを始めナストカの治療が受けられない、家でのリハビリに高額が掛かるなど主に行政の不手際、職員らの冷淡な態度が多く描写されており実際はどうなのか気になった。またこれは病気と生きる女達に寄り添って生きる男、ナストカの父の話でもあるが、子どもが病気だと分かるや去ってしまう男性も多いと日本では話題になっているけれど他の国ではどうなのだろう。一人で二人の娘を育ててきた父にママは今どこ?と聞いて、というか詰め寄って「『ロード・オブ・ザ・リング』のフロドみたいだな」と返されたナストカは「常套句、それが私達に必要なもの」と考える。赤いスリップにガウン、バラの花、煙草に酒、胸の谷間でナストカのために難関を突破する、キンガ・プライス演じるヨゼフィーナの存在もまたそうなのかもしれない。