K2 ハロルドとテイラー


銀座テアトルシネマで開催中の「クライミング映画祭」にて。昔観たことあるけど、記憶もおぼろげだし、スクリーンで体験できてよかった。


K2?愛と友情のザイル? [VHS]

K2?愛と友情のザイル? [VHS]


仲良し山コンビが、ひょんなことから夢のK2に挑むことになる物語。
原題はたんに「K2」、91年公開時の邦題は「K2 愛と友情のザイル」。観終わって、今回の題の方がしっくりくるように思った。むしろ「ハロルドとテイラー」だけでもいい(笑)本国でのサブタイトル「The Ultimate High」も悪くない。


冒頭、まずは「下界」での描写がしばらく続き、二人のキャラクターとその関係が示される。
マイケル・ビーン演じる弁護士のテイラーは、ずうずうしいことこの上ない男。葬式の場で死んだ人間の代わりにと登山チームに自分を売り込む。返事も聞かず早速ザック担いで出勤、職場で体鍛えたり、それらはともかく秘書にセクハラしたりと、まあイヤなやつ。
マット・クレイヴン演じる大学教授のハロルドは、家族と仕事に重きを置く控え目な男。彼の読んでる「死の大地」さえも心配の種になるような妻とのああいうやりとり、私は苦手。普通に送り出す・出されるか、別れちゃうか、どっちかがいい。一方が我慢して成り立ってる関係は嫌だ。まあ何でも当人の勝手だけど、見たくない。
終盤、テイラーの「そこがお前と俺との違いだな」というセリフには、上手くそらしすぎ、さすが汚い弁護士(自分で言ってるからいい・笑)!と思ってしまった。対して「俺たちの友情は、お前が損しない時だけ成り立つんだな」と返すハロルド。それでも後に、朦朧としながら妻の名を呼ぶハロルドは、テイラーのとある「告白」の後には彼の名を口にするのだった。


レーニング中、岩をよじ登るテイラーの指のアップに惹き付けられる。全篇に渡り、山において、いかにもありそうな場面、あるいはトラブルが、シンプルかつ分かりやすく描かれている。雪崩に押し流されるテント、救助、クレバスへの落下、高山病、病人の下山…そして滑落。いずれも見ごたえがある。
ベースキャンプまでの行程にも結構時間が割かれており、ポーターとのお金がらみのトラブルなどが差し挟まれる。話がそれるけど、山岳ものでポーターとのシーンを見ると、この手の登山とは、現地人にとっての「日常」を、裕福な国の人々が「発見」「征服」することなのだと、あらためて思ってしまう。当の地元の人にはどうでもいいことなのかもしれないけど。

頂上への最後のひと登りは、セリフなしに一気に数分で見せる。このシーンに限らず、音楽が少々煩い(テイラーが難所にかかると音がでかくなったり…)のが、難点といえば難点か。担当はハンス・ジマーなんだな(サントラのジャケがかっこいい)


スクリーンにでかでか映し出されて嬉しいのが、装備の数々。ハイキング程度しかしない私でさえそうなんだから、本格的な登山を嗜む人にはもっと興味深いだろう。「氷壁の女」(感想)では20年代、「アイガー北壁」(感想)では30年代、「剣岳」(感想)では20世紀初頭の日本の、仲村トオルのスーツ姿なんかが見られるけど、本作には自分が「知ってる」時代だからこその面白さがある。靴や水筒、鮮やかな色使い。通訳?の男性の手袋が、私が子供の時にしていたスキー用のものに似てた。
食事シーンがはっきり見られるのも嬉しい。雰囲気の悪い中ハロルドが盛り付けたおかゆ?を、テイラーはコッヘルに戻しぷいと出て行ってしまう。窮地に陥った二人がおぼつかない手付きでマカロニ?を鍋に入れる。ポーターたちが作って食べる平たいパンのようなものもはっきり映っている。


藤岡弘が登山チームの一員として出演、得体が知れないけど気のよさそうな雰囲気を醸し出している。日本人であることを活かしたギャグ?あり。