シネスイッチ銀座にて観賞。土曜のお昼の回はほぼ満席。
アルベール・ラモリス監督「白い馬('53)」「赤い風船('56)」と続けて上映されたため、フランスの極端な田舎と都会を両方楽しむことができた。前者の舞台である南仏の沼地は力強く荒廃した西部劇のような趣、後者のパリは、空地やごみの目立つ、坂だらけの(石畳でなきゃやってられない理由がしみじみ分かる)、でも魅力的な街並み。冒頭はなぜか「レミーのおいしいレストラン」を思い出してしまった。
「白い馬」は野生の白馬に惹かれた少年が「馬飼い」から逃亡の手助けをしてやる話、「赤い風船」は男の子が赤い風船を拾い、連れ歩く話。
「白い馬」の冒頭、薄汚れた下着兼作業着?を身につけた少年が小舟に乗って現れる。川べりの小屋に、ひげもじゃのお爺さんと妹と住んでいる。「自然は芸術を模倣…」じゃないけど(意味が違うけど)、萩尾望都の漫画かと思ってしまった(笑)片目を隠すさらさらの髪、彼が惚れる白い馬も、たてがみが斜に流れているあたり同士のようにも取れる。馬同士の対決、長丁場の追跡劇など、リアルでスリリングで面白かった。映像が美しく、撮影にどれだけ時間がかかったんだろうと思いを馳せてしまう。あのウサギ、なかなか思い通りには走らなかったんじゃないかなあとか。
「赤い風船」の主人公はくたびれたスウェットのような上下にパパのお下がりのような鞄を提げて登校する。一張羅のジャケットを羽織るとそのちぐはぐさが可愛らしい。風船と一緒に市電に乗ろうとすると、邪険に振り払うおばさんが印象的だった。街をゆく一組の「カップル」を、様々な目でみつめる大人たちの表情が面白い。
同行者いわく「どちらの話も、見方によっては辛い現実から逃れるという結末だな…」。確かにその通りだけど、ともかく、映画ってなんでもありなんだなとしみじみ思った。
ちなみに上映前に「ホウ・シャオエンのレッド・バルーン」の予告編が流れたんだけど、出てくる男の子のあまりの可愛さに目を奪われた。見ているだけで幸福、とはああいうのを言うんだろう。