翼の生えた子どもを産んだ母親カティ(アレクサンドラ・ラミー)と、その家族の物語。
とても好みだった。オゾンの映画は少女漫画でいうと山岸凉子ぽいと思ってたけど、今回は大島弓子という感じ。
ミニマムな作りの中に、「赤ちゃん」を扱ってるからこその、カメラを廻してるうちに撮れたんだろうなあと思わせられる場面がふっとあり、観ていて楽しい。うんこにちんこ、流血などが画面に現れるのもいい。登場人物の言動はとても「自然」に感じられ、好感が持てる。馬鹿みたいだけど、うちにああいう子どもがいたらどうするかな?と思いながら観てた。
カティと娘のリザ、「夫」のパコの3人の関係は、どんどん形を変えていく。必要な場面のみが重ねられ、ある時とある時の間の時間はばっさり切られているので、次のシーンではもう、誰かと誰かかの間の空気は変わっている。出来すぎってぐらいのラストシーンの後、彼らの関係がどうなるか分からないけど、「翼のある子」は、彼らにとって楽しいプレゼントだったに違いない。
7歳のリザは、母のカティと二人暮らしの時から「愛情に飢え」ているところに、男はくるわ、赤ちゃんは産まれるわで、余計に寂しくなる。その顔のアップの撮り方やセリフ…赤ちゃんに半分(以上?)取られた自室でつぶやく言葉など…は、わるい意味でなく感傷的で、彼女がこの映画のメロドラマ担当といった感じを受けた。
母の出産シーンなど、ちょっとした重大事に流れる音楽が、昔の恐怖映画を思わせる風なのも奇妙に面白い。
冒頭、パコがカティに初めて声を掛けた時、彼女はベンチで目を閉じ、顔にあたる陽射しを楽しんでいた。毎日変わらず忙しい中で、仕事や家事から解放され、一人の時間を持てた安らぎ。映画の最後のカティも、家のベッドで朝陽に目を閉じる。しかしそこには違う安らぎがある。悪くないラストだった。