84年、ジョナサン・デミ監督。ゴールディ・ホーンとカート・ラッセルが出会った作品だそうですが、観たことなかったので、借りてみました。
第二次世界大戦中のアメリカ。ケイ(ゴールディ・ホーン)は夫のジャック(エド・ハリス)が戦場へ駆り出されたのをキッカケに、軍需工場で働くことに。主任の“ラッキー”(カート・ラッセル)はトランペット奏者をめざし、夜は店で演奏している。ふとしたキッカケで知り合った二人は、やがて深い仲に…
ダンナのエド・ハリスは海兵として戦場に赴くので(冒頭、駆逐艦がどうとかいう話をしてる)、裏「Uボート」映画ともいえるかも。エド出演作としては、ちょっと前に書いた「コードネームはエメラルド」と同時期の軍服ものになります。とはいえナチスの制服きりっと着こなしてた向こうと違い、こちらではほぼセーラー服。彼は若い頃から指揮官顔だから、ちょっと違和感が…
ゴールディはどのような役柄でも、作る側がついそういうシーンを入れてしまうのか、ちょこっとした言動で笑いを誘ってくれますが(「潮風のいたずら」の冒頭、高慢ちきな金持ちマダムなのに、ペディキュア塗ってよちよち歩くところとか)、コメディとまではいかないこの映画でも、そうした仕草に心なごまされます。テーブルクロスで涙拭いちゃったり。
そもそも彼女のこうしたキャラクターがなければ、この映画、単なる生真面目なメロドラマに感じられたかも。外で働くだなんて考えたこともなかった妻が、髪を切り、化粧をし、いつしかガムを噛み噛み一人前に仕事をこなすように…だけど冒頭の「貞淑な妻」の頃からどこかしら茶目っ気を醸し出している彼女だから、肩の力を抜いて見られる。
とはいえ、あの顔で「戦争に勝たなくちゃ!オー」と言われても、チャーチルの名前口にされても、どうも気が抜けちゃう…(笑)
あらすじからすると男と女のゴタゴタがメインのようですが、お向かいに住む歌手のヘイゼル(クリスティーン・ラーチ)の存在もいい。ラストシーンがケイとヘイゼルのカットだということからも、この映画のテーマのひとつが「戦時中の女たち」であることがわかります。
人手が足りなくなれば駆り出され(タクシーの運転手も女性である)、男が帰ってくれば速攻クビ。家に戻された女たちは「私たち、ちゃんとやったよね」と声をかけあう。でも男だって、家畜みたいにぎゅうぎゅうづめで戦地に送られて、ああ戦争っていやだなあ。
ちなみにゴールディのお相手の“ラッキー”カート・ラッセルですが、私はこれ以降の映画の印象が強いんで、まだまだアクも筋肉も無いのが物足りない(笑)でもトランペット吹く姿はなかなか板についてます。
はじめと終わりに流れるのがカーリー・サイモンの「Someone Waits For You」(大きくクレジットが出る)。この曲に合わせて、オープニングでは40年代当時のアメリカ市民の写真の数々が、エンディングでは映画のシーンが振り返られます(これはいかにもジョナサン・デミというかんじ)。
きっとどこかに あなたを待つ人がいる
あなたがやってくる日を待っている
やがて なじんだ戸口に灯るだろう明かり
愛を知ったなら もう辛いことなんてない
いい曲なのでフルで聴きたくなったけど、検索したら、このBOXにしか入っていないよう…
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