フォールガイ


スタントパーソンのコルト(ライアン・ゴズリング)が「(スタントの)アカデミー賞は?」と言われてのあの顔からの、回想ではジョディ(エミリー・ブラント)ににせの瓶で殴られてきゃっきゃとふざけてたのが本物の瓶で奴らを殴ってからの、スタントが(作中の)本当の世界で生き始めるのが面白い。相棒のスタントコーディネイター、ダン(ウィンストン・デューク)に至っては「スタントはじめ!」と叫んでかかる。
最後にはいわゆる裏方が技術総動員で自分らを舐めてかかる世界に逆襲する(そもそも作中の殺人は、ばかにしていた相手から「自分でやれよ」と言われ「皆の前で恥をかかされた」と憤ってのものなんである)。予告では何とも思わなかったヘリから中指立てて落ちて行くカットをゴズリングってこんなにかっこよかったっけと見ながら、それは背後にチームがいるからなんだと考えた。皆でエアバッグの準備を急ぐこのくだりが一番好き、これまでの映画で見たことのないものを見せてくれる映画はやはりよい。

「いなくなっても誰も気にしない」スタントパーソンとカメラアシスタントの恋は、先の瓶のシーンがそうだったように撮影現場の誰も気に留めない。キスしていても誰一人見ない。それがジョディが監督になったことで…これには裏があるんだけども…「大作」へと姿を変え世界へ放たれることになる。これが面白かった。彼女が自分でカメラを抱えているのもよかったけれど、どういう映画を志向しているのかはいまいちよく分からなかった。
とはいえ予告を見ている時はゴズリングよりかっこいいと思っていたブラント(の役)が本編では全然だったのにはがっかりした。序盤の「次は?」「火だるまだ」にそういうノリかと笑ってしまいながら、それじゃあ彼女の役はかっこよくなりようがない、仕方ないなとあきらめた。かっこいい人はああいうことしないもの。配慮はされているけれど話の都合に合わせた人間に思われて物足りなかった(それでいて、ステファニー・スー演じるアシスタント共々何でそんなことができるのかという激しいアクションシーンがあるのがデヴィッド・リーチらしくて可笑しい)。