ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった


なかなか時間が進まないなと見ていたら、一、二枚目のアルバムの後に体感としてはすぐに「ラスト・ワルツ」の話になる。私のような無知な者が馴染みのある部分だけじゃないかと思うも、序盤に語り手のロビー・ロバートソンが口にする「あの頃の僕らは美しかった、美しすぎて砕け散ってしまった」との言葉を振り返り、これがそうなのかと受け取った。
私も「一番好きだったバンドが車の事故が元で解散している」クチなので、ロビーの妻のドミニクを乗せたリチャード・マニュエルが事故を起こし首を大怪我するくだりで、ああ死ななかったバンドもあるんだと思ってしまった。でもってこれがまさに、ロビーいわくの「他のどのバンドも辿らなかった、僕らだけの物語」の所以なわけである。

リズムセクションは薬漬けでロビーとガース(・ハドソン)が頼りだった」と語られるが、薬と命は必ずしも因果的に結びつかないにしても、映画の最後のメンバーそれぞれの写真に添えられた文が、生き残っているのはその二人であることを教えてくれる。ザ・バンドを愛していたと言うドミニクは依存症専門のセラピストになったという。
「Music from Big Pink」に使われたメンバーの家族の集合写真のくだりで「当時の流れと異なり彼らは親を大切にしていた」という話が出るが、映画の終わりのメンバー写真の直前には、それぞれの(端的に言って)妻子との写真が挿入される。語り手であるロビー以外のメンバーについては知らなかったから、居たのかと思った。自分を作った家族は大事にしても(自分の命をいわば粗末にしていたということは)自分の作った家族を大事にできなかった、そのことが結局は自らをだめにしてしまったんだ、悲しいことに、とでも言いたげに私には思われた。

「彼らとは真逆でサイケだった」クラプトンが彼らに会いに出向いたエピソードの際に織り込まれるライブ映像を見ながら不意に、世界はなんて成熟していたんだと思われされた。それから、今まで考えたことなかったけど、ガース・ハドソンのプレイ、いいなと思った。