「この映画は、実話に基づく部分も、創作の部分もあります」。
タバコ王の遺産を相続したドリス・デューク(スーザン・サランドン)と、その最期を看取った執事ラファティ(レイフ・ファインズ)との6年間を描いた物語。
「わがままな億万長者とゲイの執事」という設定とこのキャストだけで、どう考えても面白そうなんだけど、中盤まではピンとこなかった。(この作品はDVDスルーなので)スクリーンで二人の演技を見られたら、もっと楽しめたんだろうな。
サランドンは、目をつけた庭師について「結婚しているか否か」「性的嗜好」をちゃんと確認してから部屋に呼ぶし、レイフは主人の部屋で、ためらいもなくドレスの匂いを嗅ぎ、ヘアブラシを手にする。とにかくさわやかなのだ。
冒頭、鮮やかなオレンジ色の服で朝を迎えるサランドンは、その後も華やかなドレスを次々に身に纏う。無口に仕えるレイフ・ファインズの方は地味な格好だ。
「弁護士たちの世界はベージュでつまらないのよ、あなたの世界はどう?」
「あなたの色にそまります」
大富豪の暮らしに染まってゆく執事は、やがて髪を伸ばし、派手なピアスをし、原色の衣装を身に着けるようになる。
サランドンが、温室でタバコ片手にラファティにキスするシーン。自分に性欲を抱いておらず、またこちらが抱いても不快を示さない(あるいは示すことのできない)相手を自由にするって、もしそういう立場・機会に恵まれたら、抗えない快楽だろうなあ…って、実はそういう身分の人のほうが世の多数なのかな?
ドリスの愛人役のニック・ロルフがピアノを弾き、スーザン・サランドンとレイフ・ファインズがペギー・リーの曲を歌うシーンは、ちょっとした見どころ。