私がクマにキレた理由


ニューヨークの高級住宅街。大学の人類学科を卒業したばかりのアニー(スカーレット・ヨハンソン)はひょんなことから、「ミセス・X」(ローラ・リニー)のもとでナニーとして働くことになる。



まずは、あれこれ変わるスカーレット・ヨハンソンローラ・リニーの対照的なファッションを見るのが楽しい。印象に残ったのは、スカーレットの白いソックス(グレイの「家畜」スーツにまで合わせてるのが可愛い)と、ローラの海辺の家での白い上下(ブラウスとロングスカート?)、潮風になびく金髪。白いソックスというと私はスーザン・サランドンを思い出すんだけど(確か「ハンガー」「さよならゲーム」などで着用)、当然ながら履く人によって色んな魅力が出るものだ。


スカーレットは狭いベッドや袋入りのスナック菓子が似合う。ローラ・リニーは眼の演技がすごい。ふくらはぎ、というか脛に浮き出る筋(の有無)に、「セレブ」とそうでない女との違いを感じた。よいキャスティングだ。
エンドクレジットにポール・ジアマッティの名前があったので、出てたっけ?と思ったら、ダンナだったなんて…前にも増しておっさん化してて気付かなかった。もっともこの役は「顔のない役」なので、誰だ分からなくて正解かもしれない(笑)


全体のストーリーは「映画っぽい」んだけど、ディティールが「映画っぽくない」ところが面白い。例えばよくある映画のパターンなら、アニーの女友達(アリシア・キーズ…「スモーキン・エース」ではかっこよかったけど、ここでは全然)は、もっと含蓄あることを言ったり(「楽に見える道ほど地雷が多い」というのはそれっぽいけど)、いざというときに頼りになったりするものだし、ダンナは浮気現場を見られたことについて何らかの手段を講じるものだし、ダンナの母親にも一つくらい見せ場があるものだ。でもそれがない。


スカーレットがクマに向かってキレる内容がこの映画のメイン・メッセージなんだろうけど、「家族を大切に」などという話の中で彼女は言う…「無償の愛は永遠には続かない」。どんな両親であれ、子どもは慕うものだけど、それだって絶対というわけじゃない。


「この夏の経験で…」という最後のナレーションのとおり、ほんの一時のことで人は変わる。だから人生は楽しい。