ある公爵夫人の生涯


テアトルタイムズスクエアにて観賞。映画の日だったけど、公開されて日が経っていたからか、結構空いていた。
18世紀のイギリスを舞台に、ジョージアナ・スペンサー(キーラ・ナイトレイ)が名門貴族のデヴォンシャー公爵(レイフ・ファインズ)に嫁いでからの数年間を描いた物語。


キーラ・ナイトレイの顔のアップが多く、しかも同じような表情ばかりなものだから、いわゆる「ゲシュタルト崩壊」を起こしたように、次第に何を見てるのか分からなくなってきた。あらためて、私にとって人の顔って、実際に見たり触れたりしないのであれば、他との対比により意味が出てくるものなんだなと思った。
(ちなみに「同じような…」というのはキーラの演技がどうだからというわけではなく、そういう物語、そういう映画なんだと思う)



背景や衣装は、観ていて本当に楽しかった。
建築物については、豪奢な公爵家もだけど、ジョージアナが愛人の子を産むために訪れた「田舎」の素敵に古い家が印象に残った。向かうまでの道のりの田舎っぷりもすごい。
建物じゃないけど、公爵家の使用人たちも味わい深い。「自動ドア」は良かった。主人が通る際、こちら側の使用人が杖をどんっとやると、向こう側の使用人たちがドアを開ける(他の映画でも見られるのかな?気付いたことない)。
衣装については、初夜の際にジョージアナが「女は衣服で自分を表現するのです」と言うので、どんな格好で自己表現するのかな?と考えながら観たけど、よく分からなかった。全体的に、ヴィクトリア時代のものより「現実的」な感じを受けた。チャールズを応援しに演説に参加した際の、制服っぽい紺色のドレス(画像)が好み。


陳腐なことを言うようだけど、昔は女の結婚を「永久就職」などと仕事になぞらえたものだけど、まさにその通りだなと思った。初めて足を踏み入れる職場(公爵家の玄関ホール、階段の冷たさ!)、初めてのお役目(政党員たちの会議)…
レイフ・ファインズ演じる公爵は無表情だ。どういう親の元に生まれ、どんな成長をしてきたのだろう?と考えてしまった。魅力のないことこの上ない人間だけど(魅力なんて必要ないんだろうけど)「自分の考える愛し方で…」というのは、論理的でよく分かる。
ジョージアナが愛するチャールズを演じるドミニク・クーパーは、どうにも顔付きが受け入れられないんだけど、二人の関係がああいう結果になるなら、むしろそれでよかった。(観てるこっちが)未練が残らずに済むから(笑)
ジョージアナと彼が久しぶりに顔を合わせて会話を交わすシーンには、作中唯一、胸が痛くなった。



「あれは喜劇ですわ」
「私には悲劇に思えます」


入場の際にすれちがったおばさま二人が「あの、赤ちゃんを追いかけて走ってくとこ、泣いちゃったわね〜」と語っていたので、そういうシーンがあるのかと構えていたけど、無かった。何だったんだろう?