フライトナイト/恐怖の夜



「あいつは『トワイライト』の恋するヤサ男じゃない、
 『ジョーズ』のサメさ」


面白かった!作中のキメ場面を使ったエンドクレジットが楽しい。そのセンスの良さは本編観なきゃ分かんないから、そのために観てもいいくらい。
3Dで観てることを忘れるほど、3Dじゃなくてもいい度合いは高かったけど、たまに程よく血や火花が飛んでくるから(そこでは効果的だから)困る(笑)



先日、リメイク元の「フライトナイト」('85)を初めて観た。ヴァンパイアもののお約束を踏襲しながらも話が明快にさくさく進むのが楽しい。ガールフレンドの白いドレスは今回も同じ。



開始早々、主人公チャーリー役、アントン・イェルチンの額の後退具合にびっくり。全体的にずいぶんくたびれており、しぼんだジョン・C・ライリーかと思う(彼はヴァンパイアの方の役をやってたっけ・笑)。でもその容貌が役柄に合っていた。終盤地下に降りる際に首から下だけ見えるカット、アニメかと思うくらい脚が細い。
彼が「捨てた」オタク時代の親友エドを演じるのはクリストファー・ミンツ=プラッセ(「キック・アス」のレッドミスト)、黙っててもうざくてしょうがない、あの口元が素晴らしい。


冒頭のセリフは、エドがチャーリーの隣人ジェリーを評して言うもの。ヴァンパイアのジェリー役コリン・ファレルの初登場シーンは、庭仕事のランニングシャツ姿でしゃがんでるところ。オリジナルのクリス・サランドンはバルコニーから見下ろしていた。こちらは「妖しい魅力のミドルエイジ」という感じだから、いきなり派手な暴力を振るうのがぴんとこなかったけど、コリンはなにせ「ジョーズ」だから、全然おかしくない。ハイウェイでのアクションシーンも彼ならではで楽しい。
その代わり、チャーリーのガールフレンドのエイミーを誘惑する場面などはしっくりこない、というか少なくとも「ヴァンパイア」らしくはない。オリジナルで一番叙情的かつ面白かったのはディスコでの一幕…鏡に自分独りしか映っていないことに気付くも、涙を流しながら彼に抱かれるエイミーの姿なんだけど、本作の彼女はコリンに無理やり血をなめさせられて初めて恍惚となる。その魅力は、アリかナシかと線引きできるはっきりしたものなのだ。


チャーリーと共にヴァンパイアを退治する「ピーター・ヴィンセント」は、オリジナルではテレビ番組「フライトナイト」のホスト(ロディ・マクドウォール)だったのが、本作では舞台であるラスベガスのショーのホスト(デヴィッド・テナント)。大スターながら、素顔は革パンを愚痴るようなしょぼい男。彼もコリンとかぶるキャラクターで、女に「またすぐしぼんで!」と言われてしょぼんとするなんて、直接的すぎる(笑)ちなみにこの彼女とピーターとのやりとりは可笑しい。
寂しいのは、オリジナルでの「落ち目のスターを主人公が信じて依頼する」といういわゆる「サボテン・ブラザーズ」的要素がなくなってること。冒頭からチャーリーの家では彼もママも「フライトナイト」に夢中、ってのが趣深かったのに。本作ではピーターのファンはエドのみ、しかもチャーリーに「8歳の子どもかよ」と言われる始末。ピーター自身が最後に「十字架を使えるようになる(=自分のしていることを信じられるようになる)」という場面も当然無く、残念だった。
オリジナルではよくも悪くも「蚊帳の外」だったママはトニ・コレットが演じており、さすがにしっかり話にからんでくる。息子ともそのガールフレンドとも「友達」感覚、楽しく頼もしい。彼女がチャーリーをヴァンパイアから守るある場面には笑ってしまった(もっともこのシーンで頑張ってるのはコリンだけど・笑)。


ヴァンパイアは防犯カメラに映らないから、悪いことし放題!というのに初めて気付いた。その他、「鏡」は出てこないけど、「映らない」設定が一応何度も活かされてる。チャーリーはエドが撮った映像に「人」が映っていないことから「それ」を信じるし、自分がヴァンパイアでない証明として「モニターを見て」と言う。
ピーターが「通販で物を買う」というのには「ラブ・アゲイン」を思い出した。一見?成功してる男は通販にはまるのか(笑)


一つ引っ掛かったのは、大仰な言い方だけど、やたら「女同士の敵対」が散りばめられてたこと。隣人宅を訪ねる女性をチャーリーが心配すると、エイミーは「あんなストリッパー」というような言い方をする。「ダンサーだよ」「服を着てればね」。またピーターの家で彼の恋人にチャーリーが目を奪われると、とがめるような顔をする。こういう場面が複数あるとイヤな感じ。ガールフレンドにこういう風にされたいでしょ、というサービスなのかな?



「お前の彼女は熟してるな、
 ママも匂ってる、分からないだろうけど
 お前に二人が守れるのか?」


チャーリーに「招いて」もらえないジェリーは裏口からこう言って挑発する。このセリフに「トワイライト」が作られ、また受け入れられた理由が分かるような気がした。なんでうちらが匂われたり守られたりしなきゃなんないの?どうせヤらないなら、なんでうちらがヤりたいと思う側じゃいけないの?…って、少なくとも私はそう思うね(笑)