幸せの教室



トム・ハンクスが製作・脚本・監督・主演をつとめた作品。低学歴を理由に解雇されコミュニティ・カレッジに通い始めたラリー・クラウン(=原題/トム)と、スピーチの授業を担当している講師メルセデスジュリア・ロバーツ)の物語。


予告編から受ける印象とずいぶん違う映画だった。よく分からないやつらがとりとめのない話を繰り広げる、学校ものって感じもしない、面白いわけじゃないけど、まあいっかと思う。最後にトムが言うように「君に会えた」んだもの。


思えばこれは、トム・ハンクスジュリア・ロバーツを笑顔にするまでの物語だ。前半は冴えない表情のジュリアにこっちもしょぼんとしちゃうけど(その代わり、瓶ごと入りそうな大きな口でクスリを飲んだり、車の中で大声でオペラを歌ったり、という魅力的な場面が用意されている)、最後には幸せそうな笑顔にほっとする。彼女をヒロインにしたのは正解だったと思う。しかしそれなら、トムの役の、ひいてはトムの魅力って何だったんだろう?前半ジュリアがシケてるのは、主に旦那のせい。彼女のパートナーをあんなひどいやつにしておいて、自分はそれと「正反対」のキャラ(「guy」じゃないやつ)としてくっつくなんて、少々釈然としない。


「サングラス映画」でもあった。主役二人はいずれもサングラスを掛けて登場する。トムはオープニングの仕事の時と、スクーターを運転する時に掛けるし、ジュリアは通勤の車から降りて教室に入るまで掛けたまま。作中トムのクラスメイトの恋人が、トムと彼女がいちゃついてる(ように見える)前でサングラスを掛ける場面があるので、何か見たくないものに対する態度なのかなと思う。そしてエンドロールでは、二人は揃ってサングラスを外し「こちら」に向かって笑いかける。


それにしても、トムがああいう住宅街で隣人と付き合ってると、いまだに「メイフィールドの怪人たち」(好きな映画!)をイメージしてしまう(笑)本作には、住宅街から、キャンパス、お店、街など、うまく言えないけど、トム・ハンクスアメリカ、みたいなものが全篇にあふれている。加えて「Yes,we are OPEN!」とでかでか書かれているがあくまでもお金を遣う側にしか開かれていないお店…に象徴される、ちょこっとの「今」成分、そして時代錯誤めいた味わいのエンドロール。


ジュリアが開口一番、講義に必要なものとして互いの「care」を挙げるのが、「大学」(この場合コミュニティ・カレッジ)なんだなあと思わされる。子どもには、子どもの側からの気遣いを「求める」ことはできないもの。またそれに欠く彼女の「現状」を表してもいる。夫は「俺は男だ!」と(本当に・笑)叫ぶが、彼女が彼を嫌うのは、男だからではなく、全く「気」が無いからだ。
また、知らずに観たところ、ジュリア以外の講師役がパム・グリア(授業場面は無し)とジョージ・タケイ(授業場面たっぷり!)だったのには得した気分になった。巨大化したパムは、お昼をサラダだけで済ます。ジョージについては、彼がああいう「普通」の脇役をしてるのって珍しいんじゃないかな?いずれにせよ、あの配役はずるい!スタートレックネタも一応あり(笑)