食べて、祈って、恋をして


日曜の夕方、新宿ピカデリーにて観賞。先週は満席で断念したのが、3時間前の予約で最後の数席だった。小さなスクリーンだからかな。



「混乱してるのは周りであって、自分じゃない」



NYでジャーナリストとして活躍するエリザベス(ジュリア・ロバーツ)が、イタリア〜インド〜バリを巡る1年間の旅に出る。
ベストセラーだという原作は読んでないけど、観る前にふと映画版「プラダを着た悪魔」を思い出した。主人公があれこれ思う内容が面白い小説を、ストーリーだけ追うような映画にしたら、つまらないもの(「プラダ」はそんな感じ)。


でもってどうだったかというと、やはり中途半端な感じを受けた。
ジュリア演じる主人公は、原題直訳のタイトル通り、イタリアで「食べて」、インドで「祈って」、バリで「恋をして」。楽しいのは何といってもイタリア編、「異国情緒」が手っ取り早く味わえる。観ていてお腹が空く度合いの高さでも近年一番。狭苦しい店内でピザを頬張るシーンに、映画版「HERO」で木村拓哉がチゲを食べた食堂を思い出した(観賞後、韓国料理を以前に増して食べるようになったものだ)。
一方ヒンズー教の修行に励むインドでは、主人公の何がどう変化しているのか分からず飽きてしまった。想像だけど、文章なら心の動きが読み取れて面白いのかもしれない。


とはいえ、主人公には共感しながら観た。「誰かとパートナーである」ことでなく「自分が満足する」ことを優先していると、「うまくいかないと分かっていながら、パートナーで居続ける」ことを重要とする人と揉める…これを何度も経験してるから。主人公が回想する、元夫との結婚式でのダンスシーンでは、一人の相手と「パートナーで居続ける」ことが重要とされる社会では、ひずみが出る(ひずみを受け持ってしまう人がいる)ものだよなあと思った。
また、インドで出会うリチャード・ジェンキンスにいきなり「あなたってジェイムズ・テイラーに似てるわね」と言うシーンなど、話を聞きながらああいうことが頭に浮かんで、口に出ちゃうことってあるよなあと思った(笑)


最後に主人公は「今回の旅のテーマ」をナレーションする。「起こったことすべてをclueと見做し、自分自身を許す」「調和とは何かを知る」。clueに従って行動するなんて、贅沢な遊びだ。
旅に出る前、友人は「つまらなくても結婚生活を続ける、皆がやってることよ、あなたは逃げるの?」と言う。バリの新しい恋人もとある場面で「逃げるのか?」と言う。作中の意味なら「逃げ」て何が悪いのか?人のすることに「自分探し」だのなんだのと名前をつけるやつは、放っておけばいい。混乱したり名前を付けたりするのは、自分でなく周囲なんだ。


男優の演技は皆よかった。ジェームズ・フランコが全く可愛く撮れてないのにはがっかりしたけど、ストーリー上その方がいいとも言える。
ハビエル・バルデムが、自分で作った「mixtape」を流すシーンには笑ってしまったけど、その直後のジュリアが、作中最も…というか唯一、愛らしい顔をする。いつも可愛い顔してるわけじゃない、そこがいいなと思った。