BALLAD 名もなき恋のうた


結構面白かった。観に行って良かった。


戦国時代にタイムスリップした少年とその家族が、小国の武士たちと一時をすごす話。
クレヨンしんちゃんの劇場版シリーズは「オトナ帝国の逆襲」しか観たことがない。この映画の原案「戦国大合戦」も観てみようかな?



まず面白かったのは、作品のかなりの部分を占める戦闘シーン。サブタイトル通り「名もなき」国同士の戦いだから、規模が小さく、見ていて楽しい。「レッドクリフ」のように画面の見渡す限り人・人・人…ということはなく、全員が何をしてるか分かる。春日のお城の、大家族が暮らす砦といった感じの素朴さも魅力的だ。
疲れ切ってよれよれの者同士のやりとりや終盤の長い槍での攻撃などは、これまであまり目にしたことがなく、本当にこうだったのかも、なんて思ってしまった。「戦に関わる者は皆勘定に入れる」という又兵衛(草なぎ剛)のセリフや、それを裏付ける炊き出しの描写も楽しい。戦闘中の城内の様子に、なぜか「ワイルドバンチ」の村を思い出してしまった(笑)


それから、これは「クレヨンしんちゃん」、あるいは漫画・アニメというジャンルの味なのかもしれないけど、タイムスリップの扱いが大仰じゃないところが好み。タイムパラドックス?の数々は、あまりにもあっさり回収される。石仏の傍でしんちゃんがあるものを取り出した際には、「え〜これだったの?」と声をあげて笑ってしまった。
戦国時代に現代人がクルマで乗り込めば、びっくりされるに決まってる。それをそのまんま描く楽しさ。しんちゃん一家が過去で活躍できるのは、たんに未来人だから。それが良かった。戦いに明け暮れる時代に生きてるわけじゃないんだから、あんなに「普通」でいいんだ。


主役の男の子は、左目だけまつげがくるんとしてる。これまで「逃げて」ばかりだったしんちゃんが何事にも立ち向かうようになる、というのもテーマのようだったけど、そこのところはよく分からなかった。
しんちゃんの両親を演じた筒井道隆夏川結衣は、くたびれ具合がいい。目が血走って見えたのは気のせい?春日の城主(中村敦夫)に対し「現代にはあなたたちの名は残っていません」などとあっさり口にしてしまう(これはとても重要なシーン)、気のきかない可笑しさも、筒井道隆の朴訥な感じに合っていた。
又兵衛の弟分(家来の息子)の文四郎を演じた吉武怜朗も印象的。戦場では気合十分で構えてるのに、まだこわっぱで誰からも狙われず、一人空回りしてるのが可愛い。ちなみに敵方の大沢たかおの陣営にもまだ幼な顔の少年がいて、映画では珍しいなと思った。


エンドロールの映像中、武士たちが現代のあるものに触れる場面で、「原始のマン」の同じようなシーンを思い出した。「原始のマン」のあれは、私にとって「観ると元気になれる映画のシーン」の永久第一位だから(それほどブレンダン・フレイザーが超・超キュートだから)、この映画のあれだってもっと可愛らしく撮れただろう、と思ってしまった(笑)

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