プレステージ


日比谷スカラ座にて。2時間以上あるからと、同行者がドーナツプラントのマンゴドーナツを買ってくれたのに、エンディングまで手が伸びなかった。隣の男性は中盤より、前の座席に手をかけて前のめりで観ていた(私もたまにするけど、他人がしてるのを見ることはめったにない・笑)。
薄暗い19世紀末のロンドンで、マジシャンのアンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)が、人生を賭けての騙し合いを繰り広げる物語。



映画はマイケル・ケインの語りで始まり、幕を閉じる。この映画自体が、彼の手にかかる贈り物、マジックショーのようにも感じられる。
まずはケイン様が斧を携えるのにドキドキ。男性が重いもの持ってる姿って好きだ。まだ斧を振り下ろすだけのチカラがあるのに安心した(それとも力が足りずあんなことになった…とは思わないけど・笑)
その他クリスチャン・ベールヒュー・ジャックマンとメインキャストは大男揃いで、それだけで目を楽しませてもらいました。スカーレット・ヨハンソンがアクの無い役をやっていたのも観やすかった。


(以下ネタバレになるかも)
クリスチャン側の事情は、彼がサラの部屋を初めて訪れた際に推測できてしまった(しかしあんな「日常瞬間移動」男、絶対ヤダよね…)。
サラが知れば「なんだ、つまらないのね」と言うだろう。でもそういうこと、言っちゃあいけないし、そういうもんじゃない。ケイン様の言うとおり「あれしかない」というだけのことだ。彼はクリスチャンをけなしているわけではない。その言葉にそれ以上の意味はない。


ニコラ・テスラを演じたボウイの、薄気味悪い声が良かった。アンジャーを招いてテラスで食事するシーンでは「地球に落ちて来た男」を思い出してしまった。雪野原一面に電球が輝くシーンも印象的だ。
彼と対立するエジソンが、姿は見せずともその存在をアピールしているのが面白い。この映画が、何かに憑かれた男達の話だということだ。


ヒュー・ジャックマンは「新・瞬間移動」に盲目の助手を雇う。彼等は100日間の舞台の間、黙々と仕事をこなす。「目の見えない者が必要だから依頼する」側と、「引き受けて仕事する」側との、湿っぽくない淡々としたギブ&テイクの関係が、観ていて心地よかった。