ザ・ファイター



「兄さんはぼくのヒーローだよ」
「昔はな、昔は…(I was, I was...)」


実在するプロボクサー、ミッキー・ウォードをモデルにした作品。私の二大・特別な人の共演なので楽しみにしてた。ラスト、ミッキー役マークの試合シーンに胸が熱くなった。



マサチューセッツ州ローウェルに暮らすプロボクサーの兄弟。兄ディッキー(クリスチャン・ベール)はかつての名選手だが今は薬物に溺れている。弟ミッキー(マーク・ウォルバーグ)は、兄や母アリス(メリッサ・レオ)の言うままに試合を重ねるも芽が出ない。しかしバーで働くシャーリーン(エイミー・アダムス)と出会い、父の後押しもあり自らの今後を考え直すようになる。


オープニング、かつて街のヒーローだったディッキーが「カメラ」に向かって喋っている。この「ドキュメンタリー番組」は後に憎いほど活かされる。「カメラ」はくたびれたローウェルの街に出て、兄弟と街を映し出す。「街」映画でもあったのだ。話はその後、兄弟とそのファミリーの問題を追い始める。ボクシング映画って感じじゃないなあと思ってたところが、終盤一気にくる。ボクシングの場面が現れるに至って、それまでの、ボクシングじゃないシーンも「fight」だったんだと分かる。世界戦の相手の方には、どういう家族がいるだろう?なんて思ってしまった。


クリスチャンは、私、この人のどこが好きだったんだろう?と思わせられるほど、冴えないクズ男を熱演。でもちょっと違和感を覚えてしまった。溜り場で仲間と「爛れた」時間を過ごす様子や、母親が来ると二階の裏窓から飛び降りるが毎度見つかってしまう…というギャグ?など、生来のお坊ちゃんぽい感じと合ってない。真面目な警官が「潜入捜査」してるみたい。マークも同様で、彼らのケツの重い雰囲気が、醸し出そうとしてる「軽い感じ」の邪魔になってる。私は二人のそういうとこ、好きなんだけど。
(ちなみにクリスチャンのボクシングガウン姿には、「悪魔のようなあいつ」で赤ちゃん背負ってる細川俊之を思い出してしまった・笑)


試合を終え、リムジンで帰る場面。一杯飲んで上機嫌の母は、外に出て行こうとする息子に対し当たり前のように「家族が一緒じゃなきゃ意味ないじゃない」と言う。
「母&兄」と「父&恋人」の板挟みになったミッキーが「皆大事なんだよ〜皆でやりたいんだよ〜」と訴える場面。「自分のことを思っている人が、自分のよい助けになるわけではない」ということをしみじみ思わされる。マークの抑えた演技がいい。
ディッキーが「弟のために」シャーリーンの家を訪ねる場面。クリスチャンの罵倒を受けるエイミーの顔つきが印象的。
ミッキーが負け戦以来久々に「いつもの店」に顔を出す場面。ベタなシーンだけどじんとしてしまった。


ウォード家の7人娘の格好がいい。霜降りのスパッツとか履いちゃって。
シャーリーンのことを、彼女たち、あるいは後に家を訪ねて来たディッキーは「MTV girl」と蔑む。ニュアンスが分からないけど字幕では「尻軽女」ぽい表記。女同士でそんなことが悪口になるなんて、好き勝手やってるようで、全然「自由」じゃないなと思った。