人生の特等席



公開二日目、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて観賞。全編どこを切っても「古きよきアメリカ」、イーストウッドが正統派アメリカン爺プレイで魅せる。とても楽しい時間を過ごせた。
「外は大雨、中は大火事、なーんだ?」「答えは、イーストウッドがハンバーグ焼いてる家」なんていう、なぞなぞにもならないなぞなぞを思い付いてしまい、頭から離れず困った(笑・観れば意味が分かる)


映画はクリント・イーストウッド演じるガスの見る「悪夢」(だと後に分かる)、目覚める顔のアップ、その後、小便が出ず、頑張れ!とちんこを励ます後姿に始まる。びっくりさせられるスパムの朝食、けつまづいて腹を立て蹴飛ばす机。哀愁と笑い、後者が勝っている。これでイーストウッドの隣に犬がいれば完璧!と思ったけど、移動が多い仕事だから飼えないんだな、仕方ない。
男はメジャーリーグの実績あるベテランスカウトマンだが、今や年老いて、体にガタがきている。職場には信頼し合う親友のピート(ジョン・グッドマン)、遠方に弁護士をしている一人娘のミッキー(エイミー・アダムス)がいる。


ガスはスカウトについて「野球がどうあるべきかを決める仕事」だと言う。一方、彼に比べたら随分若い「ライバル」のフィリップ(マシュー・リラード)は「俺はGMになる」と豪語する。私としてはこのあたりの描写から、ガスが「子どもとの触れあい」のために敢えて平でいる教員、フィリップは「出世」を目的とする管理職候補、に思われてしょうがなかった(笑・もちろんそんなに単純なものじゃないけど)


ミッキーとジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)の恋愛パートもいい。ジョニーは「頭がいいって聞いてたから、君を見た時、違う娘だと思った」なんて、都会の弁護士は絶対口にしないようなオールドスクールな、平たく言えば女性蔑視な文句で口説くけど、演じるジャスティンのチャームもあってか、むかつかない。
二人が「初めて結ばれる」場面では、「待つよ」「いつまで?」「いつまでも」なんてシンプルなセリフのやりとりにぐっときた。その後の一幕は野生動物のそれのようですがすがしく、ディズニーの動物アニメを観てるような気持ちになった。その後に二人が歩く街角にはふとディズニーランドが重なり、ディズニーってこういう、アメリカの良さげなところを掬い取ってきたんだなと思った。


実は一番気になったのは、ミッキーのパンツ(下着)。スーツ姿でやって来た彼女の格好は次第に「ラフ」に、ラストシーンでは折衷とでもいうようなところに落ち着くんだけど、あの「ラフ」な服の数々は、昔のものを持って来たのかな?でもって、その下に着けていたパンツは、スーツ姿の時からそうだったのかな?そしてさらに、もし到着した直後からああいう「ラフ」な格好だったなら、初めて彼女を目にしたジョニーは「ワーォ」なんて口にしただろうか?まあこれは無意味な想像だけど(笑)
彼女が最後の試合を観に行く時から被るピンクの帽子は、野球あるいはアメリカに詳しい人が見れば、何だか分かるのかな。三人が着けている腕時計にも個性が表れてるように思ったけど、詳しくないから分からなかった。


ラスト、イーストウッドに門を押さえてもらい、出たらジャスティンが待ってる、なんて素晴らしい世界(笑)そして幕切れは、次の世代の前から去る老人の背中。長くは捉えず、ぱっと切る。そのセンスがいいなと思った。