チェブラーシカ


シネマ・アンジェリカにて観賞。まず同作者の「ミトン」('67)、その後に「チェブラーシカ」4話('69'〜'83)が上映された。「チェブラーシカ」のほうを観るのは初めて。
マークシティ内にずらりと並んだ吊り広告には、「(チェブラーシカと友人ゲーナの)二人の優しさが、街に幸せを生み出してゆく」とかなんとか書かれてたけど、そういうかんじは受けず、何も知らない二人が色々する話だった。でも可愛いからいい。



「ミトン」の冒頭、女の子が家の中から雪の積もった外を眺める、その窓の曇り具合が見事だ。「チェブラーシカ」においても、建物からチェブラーシカの顔まで、その汚れ具合がいい。かんなくずなどもリアル。でもデザインや雰囲気が好みなのは「ミトン」のほうかな。


物語は、動物園で働くワニのゲーナが書いた「友達募集」の貼り紙を、南国から箱に詰められてやってきたチェブラーシカが見かけ、彼を訪ねるところから始まる。その他の仲間も友達がおらず、皆で集まって何をするかというと、とりあえず手持ちのもので時間をつぶす。たんなる「友達」という関係の面白さを感じる。
結局彼等は「友達がいない人のための家」を作る。これに限らず全篇、ゲーナもチェブラーシカも、常に何かしなければという勤労意欲にかられており、そのあたりがいかにもロシアの子ども向けっぽい。そのわりには「万引き」や「銃」などが出てきたり、外国人の観光客がひどく描かれたりしてるのが可笑しいけど。


もう一人の主要キャラクターは、カバンの中にねずみを連れたいじわるおばあちゃん。とにかく他人を嫌がらせるために駆けずり回っている。
しかしゲーナもチェブラーシカも、なんだかんだいって彼女から離れようとしない。「人の性格とは固定されたものでなく、その関係ごとによって決まる」と私は思っているけど(岸田秀などもそういうことを言っている)、まさにそのとおりで、おばあちゃんは彼等にとって「いじわる」ではないのだ。たとえ199キロの道のりを歩かされそうになっても。ラスト、列車の「上」に乗ってゆく3人の姿が印象的だった。