枯れ葉


フィンランド映画祭の先行上映で見た時の感想はこちら

オープニングクレジットはアルマ・ポウスティ、ユッシ・バタネン、アキ・カウリスマキの順。そんなことと思われるかもしれないけれど女としては気になるもので、アキ映画で女性の名前が最初に出るのはこれまでカティ・オウティネンのみだった(『マッチ工場の少女』はそりゃそうだろうけど『愛しのタチアナ』『浮き雲』も)。次いで映し出されるのはスーパーのレジで精算され流れ積み重なる大量の肉。アキの劇映画の歴史は『罪と罰 白夜のラスコーリニコフ』(1983)のラスコーリニコフの職場である食肉処理工場に始まるが、この極めて「身近」な場にある肉には、今や色んな問題が「みんな」に関係あるんだと言われているようだった。

やはりこの映画の主役はアルマ演じるアンサである。前回も思ったけれど、再見して改めて、アキが女性をここまで前面に出したのは初めてだと感じ入った。女同士の連帯がこれまでよりうんと強く描かれ、それを表すための、多分初めての女同士での手つなぎもある(対して男と女は握手をする)。アンサが最後にしている類の肉体労働を女性が担っている描写も見たことがない。そのとき彼女が身に付けているつなぎの色は赤でも青でもなく、ある時期からアキがよく取り入れるようになったカーキというか黄土色である。

一方ユッシ演じるホラッパは、これまでの作品で曖昧に描かれていたアルコール依存の問題を主に通じて、いわゆる「有害な男らしさ」を捨て去る。冒頭彼をカラオケに誘って「タフな男は歌わない」と返された同僚フータリ(ヤンネ・ヒューティアイネン)いわく「お前はタフな男なんかじゃない」。男同士はいつも黙って支え合っていたけれど、言葉でこのように助言する友人は初めてだ。終盤、女性バンドMaustetytotの演奏を聞いたホラッパは…一人で外に出てからも店内の彼女らの姿(=彼がそれを見ている、影響されているということ)が丁寧にも挿入される…すぐさま愛する女性に会いに行くのではなくまず酒を断つ。よい人間にならねばならない、愛があればいいというわけじゃない。

前回は見逃していた色々…「サッカーの話」の汎用性。ホラッパのベッドの脇のトム・ジョーンズの写真。アキのこういう、言ってみれば至極単純な表象の使用、「ハリウッド」を揶揄するのに「ロッキー」を用いたりね、嫌いじゃない。アンサの家の絵は画家であるアキのパートナーによるものだろうか?