BTSの曲が使われたアメリカ映画


▼『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem/2023)』を見ていたら、タートルズの一人ドナテロの着メロがButterだった。ファンという設定なのかなと思っていたら、後半milkingの最中に彼が「やり残したこと」としてBTSのコンサートに行きたかったと言い、全員でButterを歌う。

BTSが出てきた瞬間、作中最初に名前の出てくる有名人であるビヨンセもそうだろうけど、この映画のテーマに即して、バンタンの作る場なら誰も排除されないよと思ってしまった。しかし映画の終わりの登校初日にネズミのスプリンターが彼らを陽の光の下に送り出す「お前達がどんだけクールか見せてやれ」との言葉に、クライマックスの戦闘シーンの時から思っていたんだけど、クールじゃなきゃだめなんだと少し寂しくなった。それは「アジア系(など)が受け入れられる」ようになった道のりと似ている。断固として拒否する人々がいるだろうことも想像できる。

これを機に、遡って「BTSの曲が使われたアメリカ映画」を自身のツイートのログを頼りに簡単にまとめておく。ちなみに『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』のジェフ・ロウが同じく(共同)監督を務めている『ミッチェル家とマシンの反乱』(The Mitchells vs. the Machines/2021)では予告編でのみMIC Dropが流れていたので、今回は使ったんだと嬉しかった(私はタートルズのことを全く知らないんだけど、ドナテロは「おたく」の文脈でK-POP好きという設定らしい)。

▼『ミー・タイム(Me Time/2022)』ではケヴィン・ハート演じるいわゆる主夫の主人公が、マーク・ウォルバーグ演じるwildな友人との狂騒の果てにありのままでいいんだ、子どもを楽しませるのが得意な自分は「スーパーパパ」として生きるんだと決めるラストでDynamiteが流れる。BTSの曲が使われる映画は子どもが柱の作品であることが多いが、同時に下に書くジョン・シナの例のように「男」らしくなくてもいい、強がらなくてもいいんだという意味合いもこめられているように感じる。

▼(Twiiterで教えていただいたので追記、ありがとうございます)『SING シング・ネクストステージ(Sing 2/2021)』ではパトロンのわがままや侮辱に耐えかねたバスター・ムーン(マシュー・マコノヒー)一座が劇場を乗っ取っての一夜限りの興行を決意、警備を蹴散らすためロジータリース・ウィザースプーン)の子ブタ軍団が放たれる際にNot Todayのイントロが。とても合っているけれど歌詞もぴったりだからもう少し聞きたかった。

▼『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード(Clifford the Big Red Dog/2021)』では予告編でのみDynamiteが流れる。

▼『エターナルズ(Eternals/2021)』は日本で劇場公開された初めての「BTSの曲が流れるアメリカ映画」。映画スターとなったキンゴ(クメイル・ナンジアニ)が撮影中に彼を呼びに来たセルシ(ジェンマ・チャン)とイカリス(リチャード・マッデン)の前で「BTSも出演するのに」と嘆いてみせる。その後に移動する機内のシーンでずっと流れるのが、ジミンとVが「ぼくら似てないけど永遠に(音楽活動が終わっても)一緒」と歌うFriends。私としてはこれは他の映画での使われ方と違い、若い女性である監督のクロエ・ジャオが大作映画を自分の好きなもので彩ったとでもいう軽やかさを感じた。


▼『ファイティング・with・ファイア(Playing with Fire/2019)』は私の知る限りBTSの曲が使われた初めてのアメリカ映画。ジョン・シナ演じる消防士が養子にした少年の趣味に合わせてBTSで踊るようになるところで終わる。曲は勿論Fire、消防士にちなんでいるし文脈にも沿っているわけだけど、後に他の映画で使われるのがほぼ英語で歌っているDynamiteかButterであることを思うと、自らをARMYと言うジョン・シナの希望で用いられたのだから格別の一体感があるように思う。

ジョン・シナが映画公開に際してツイートした内容。
https://twitter.com/JohnCena/status/1192033227323654144


Billboardの記事にもう少しだけ詳しくある。
https://www.billboard.com/music/music-news/john-cena-including-bts-song-playing-with-fire-soundtrack-8542897/