シアター・キャンプ


「永遠の友情を見つけに来て、ニューヨークからたった4時間」(最後に皆で歌うCamp Isn't Homeの歌詞より)…4時間とは遠いな、でもアメリカは広いからなと思ったけれど、そういうことじゃないのかもしれない。二人の父親に育てられているデヴォンがステージで「異性愛者として生きる!」と叫ぶのが、彼には「普通」でもマジョリティってマイノリティにこんなことさせてるよねというジョークになってしまうように、このキャンプは普段のいわば裏返し…裏にされてしまっているものが表になるという意味…であり、ここではどの子も自分を存分に出すことができる、そのための「たった」4時間なのかもしれない。
アメリカの学校映画で見る小さな派閥がここでは世界の全て。他の趣味で考えたら当たり前だけどその中でも更に派閥があるのが面白い。加えてここでも誰とも合わない孤独もあるんだろうなと想像する。そう思った時、映画が始まって早々に退場するジョーンの言葉だという「夏は過ぎ去るが演劇の感動は永遠」が胸により迫って来る。

キャンプでの少数派はジョーンの息子というのでやって来た門外漢のトロイ(ジミー・タトロ)の他、初参加のデヴォンもそうだと言える。ジョーンの生涯を描く劇の練習中に彼が「父親になったことがないのに、どうすれば?」と聞いても「ジュリアン・ムーア認知症か?」と返されるのみ。それにしても、子役出身のダーラが「(あなたの)お母さんの役をありがとう」とトロイの部屋に入ってくるのが奇妙に感じられ、彼がロータリークラブの面々を「もてなす」のに演劇と騙して子どもらをコスチューム姿で使う場面にふと『ダウンタウン物語』を思い出し、演劇って多くの場合子どもは大人を演じるんだなと面白く思った。そしてここでは当の大人たちはカリスマを失っておろおろしているんだから。
初日に騒ぐ子ども達の前でエイモス(ベン・プラット)が『なんて…』と振ると全員が一斉に『美しい朝なんだ~』と歌って話を聞く態勢が整うのには、教育関係者ならこういう世界でもこれが使えるのかと思うだろう。後にトロイが真似してもうまくいかないのが面白かった、そりゃそうだ。