ダイバージェント



「全米で売上400万部突破のベストセラー小説」の映画化。5つの「派閥」(「無欲」「勇敢」「博学」「高潔」「平和」)に分かれて生涯を過ごすよう定められた近未来のシカゴ。どれにも当てはまらないと判定された「異端者」(ダイバージェント)は危険人物とされ、そのことを隠して何れかの派閥に入るか、ホームレスとして生きるかの道を選ぶしかなかった。


冒頭、こうした「設定」が主人公ベアトリス(シャイリーン・ウッドリー)のナレーションと共に説明されるくだりでは、こんなくそみたいな話を二時間半も見るのか!と唖然としてたんだけど、次第に面白く…どんどん面白くなっていった。あの列車はどこがどう運営しているのか?に始まり、「設定」について疑問に次ぐ疑問が湧いてくるんだけど(「ヴァーチャル」にまつわるあれだけの技術がありながら、なぜあんな生活をしてるのか?)、面白い要素が色々と出てきて、描きたいもののための設定なのだからと気にならなくなった。「列車」にしたって、最初は白けて見てたのが、二度目(「仲間」を「要塞」に案内する場面)にはわくわくし、三度目(ラストシーン)にはお馴染み感覚ににやにやしてしまう。
「仲間」が自殺しても「彼は無派閥になってしまいそうだったから…」と皆「納得」する世界。「排除されないため、馬鹿すぎないよう、秀ですぎないよう」自らを枠に合わせていた主人公が、そこを飛び出して組織に歯向かう。クライマックスで単身、銃を手にした時に彼女がとる行動は、「枠」の中では決して出来ないことだ。


ベアトリスと教官トビアス(テオ・ジェームズ)の、といっても完全にベアトリス目線の恋愛描写が楽しい。「女の子が主体でかっこいい男の子に恋をする」映画ほど楽しいものは無いのに、少ないから貴重だ。出会いの場面、あることをして生まれて初めてであろう興奮を得た彼女を彼が抱きかかえる。明らかに彼女目線の(「対象」の)トビアスの顔とそれを見る(「主体」の)ベアトリスの顔のカットに、「恋」の誕生が表れている。でもって、友人のクリスティーナ(ゾーイ・クラヴィッツ)がせいぜい「同級生」といちゃいちゃしてるうちに、こっちは言うなれば訳ありの先輩と隠れて(というかなぜか誰も気に留めない・笑)同棲してるんだから。朝帰りのセーターなんて、くらもちふさこの漫画で、あの子の上履き、上級生のだ!みたいな感じ(笑)
見飽きた感もある「ヴァーチャル」要素の、恋愛に絡めた使い方もいい。個室でのテストの際、注射器を挿入されてのあの吐息。「俺はお前を見た」だなんて、彼だけが知る私の姿があったり、前人未踏の「俺の心」に招かれたり、そうかと思えば「衆人環視」の中で、押し倒されるのを皆に見せ付けたり(あんな馬鹿げたテストって無い・笑)、「セックス」無しのエロのお膳立てが揃っている。まあ俗、極まりないんだけど!


ビアス役のテオ・ジェームズは「遊び」の無いモーリッツ・ブライプトロイという感じ。なぜポスターで気付かなかったんだろう。加えてジェームズ&デイヴのフランコ兄弟の切れっ端(甘いクリームが無いところ)がちょこっと入ってる。
主役のシャイリーン・ウッドリーが「悪役」のケイト・ウィンスレットに似てるのが面白い。登場時からケイトに似てるなあと思ってたので、「本人」が出てきてびっくりした(「悪役」なんて初めてだよね?)母親役のアシュレイ・ジャドが思い掛けない(思ってた通り、とも言える・笑)活躍を見せてくれるのも嬉しい。それに映画を見ていてこんなこと、普段あまり思わないんだけど、シャイリーンの演技がとても上手かった。ともあれ「トワイライト」しかり「ハンガーゲーム」しかり、いいカップルを見せてくれるものだと思う。