すばらしき映画音楽たち



「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション」で満席続きで逃したのを、イメージフォーラムにて観賞。王道タイプのドキュメンタリーだった。まずは馴染みの名場面の数々がスクリーンで見られるんだから楽しくないわけがない。とはいえ皆と一緒にカリコレで見る方がやっぱり合ってたかな(笑)


作中数少ない、姿を見せる映画監督の一人目がゲイリー・マーシャルで、遺作かあと気にしつつやはりカリコレで見逃した「マザーズ・デイ」(2016)の「spotting」(「すり合わせ」みたいな感じ?)をしている。映画音楽作曲家のジョン・デブニーが自分達の役割を説明してくれる。監督の「映画の始め20分は状況説明でたるいから(飽きさせないよう音楽が必要だ)」なんて聞くと、彼の映画を見直したくなる(笑)


話はリュミエールに始まり、初期の映画館では映写の音をごまかすために時には即興で音楽が付けられていたという話を経て(「シアターオルガン」の素敵さよ、弾いてみたい!)、「キングコング」(1933)の映像は「作り物」だけど音楽によって「本物」になり得た、と運ぶ。「サイコ」(1960)のシャワーシーンは音楽が無ければ全然怖くない、「ジョーズ」(1975)の襲撃シーンは音楽が無ければ何が何だか分からない、なんて頃には、要するに殆どの映画とは映像と音楽との共同作業なのだと分かってくる。トレント・レズナーやジャンキーXLなど近年活躍している作曲家も出てくるけど、私としては、好みはさておき、作中の語り方からはダニー・エルフマンの登場に「新時代」を感じた。


デヴィッド・アーノルドによるドラマ「シャーロック」の音楽が、ジョージ・マーティンが教会を改装したスタジオで録られていたとは知らず、天井から傘が降りてくるような室内の仕組みなどを面白く見た。ちなみにこのくだりで彼が手掛けた「007 カジノ・ロワイヤル」(2006)の収録シーンが流れるんだけど、前半でコネリーボンドにつき「あの曲が流れるとボンドが無敵に思える」と語られていたのと比べると、やはり「無敵度」が落ちる(笑)でもそれが「今」なんだな(と言っても「カジノ〜」はもう12年近く前の映画か)


見ながら、話にはのぼらないタランティーノのことを少し考えた。現在、世や私の心を騒がせている問題のせいもあるかもしれないけれど、映画音楽の必要性を語るのは、それを使わない理由を示唆することにもなるから。モリコーネの話なんかは、手掛かりにするにはあまりに欠片だけど。ただ、脳神経学者の「メロディとリズムでは反応させる脳の部分が違う」、誰だったか映画音楽家の「モリコーネは斬新、複雑というわけじゃないがとにかくメロディが凄い」などの言葉を素直に掛け合わせると、モリコーネはとりわけ「あるところ」に特化した仕事をする人なんだなと思い、タランティーノはそれを自分でやりたかったのかなと想像した。