わたしはバンドゥビ


イスラーム映画祭にて観賞、2009年韓国製作、シン・ドンイル監督。バングラデシュからの出稼ぎ青年と出会った女子高校生の心の変化を描く。故郷に美しいという海への道中、車のシートベルトを外して風を感じる映画お馴染みの状況(だけど体までは出さない)を男がやるのが珍しい。それは勿論、一番下に踏まれているのが彼だから。通貨危機を経た不景気の中やって来るも賃金を踏み倒され、至るところで差別を受けている(その因が「肌の色」であることが会話からはっきりと分かる)。バンドゥビ(女友達)にはその上に肥え太っている者に僅かな一撃を与えることしかできないが、それでもなお、というラストシーン。

女子高校生ミンソ(ペク・ジニ)の母は生活苦にあえぐシングルマザーで作った料理を同居の男が食べつくしても意に介さない。常にお腹を空かせている娘は機会と見るやごはんをおごってもらう。その相手が男ばかりなのは若い彼女が「つけこめる」のは男だけ、裏を返せば立場の弱さを語っている…物語がそう設定しているんだけども、この映画はその点には無自覚のようで今の目で見ると引っ掛かった。教師の「まさかあの店で?」をジョークとしているのも女子同士の髪の掴み合いなんてクリシェも、そういうところから来ているんだと思う。

カリーム(マフブ・アラム・ポロブ)はミンソに「おごる」でなく料理をふるまってくれる。何とも嫌な空気こそが二人の置かれた状況を表していた出会いの後、よりにもよって彼は弱い立場の彼女に頼ってしまうわけだけど、だからこそ近付くことが出来たとも言える。双方の考える「普通」ではない、決して予定されていない関係を調整しながら築いていく過程が見どころだが、母親の性生活を間近に見ているミンソが男と交流するのにそれを使おうとするので摩擦が起きる。性器をしごいたりキスしたりする時間がやたら長いのを薄気味悪く感じたんだけど、あれは性を介在した場合の二人の関係の据わりの、居心地の悪さを示しているんだろうか。