モガディシュ


世界中どこにいても政治的立場を明確にすることが求められるコリアンの中でも最もそこから離れられないはずの人々が人命の下に一つになる。南のハン大使(キム・ユンソク)の「我々はコリアンだ」がそれを表していた。ちなみに中盤カン・テジン参事官(チョ・インソン)が偽造しようとしている書類に北のリム大使(ホ・ジュノ)夫人の生年が「1935」とあり気付けることに、大使ら以上の年齢の人々はかつては実際にただのコリアンだったのだ。

この映画はソマリア内戦を韓国の民主主義運動に重ねているのと同時に、その国のことはその国の人にしか分からないのだという視点も備えている。ハン大使夫人キム・ソンヒ(キム・ミョンヒ)の「韓国のことなら分かるけど…」という直接的なセリフは勿論、ソマリア市民の叫びや、政府と通じている大使館を襲撃しに来た反乱軍とそれを攻撃しに来た政府軍が目の前で激突するのを、「我々は皆さんと友達になるため…」と韓国語と現地の言葉で交互に流すスピーカーの後ろから窺うという、韓国映画らしい間抜けな空気の漂う場面にも表れている。子ども同士は国は違えど通じるところがあるが、その境遇は全く違うという描写にも。

この実話を作品化する際に見る方としても気になるのがソマリア側の描き方だが、最初に丁寧に撮られた死体の血と涙が「背景」の残酷さを訴えていた(彼らは彼の「背景」をそれまで全く知らなかったわけである。序盤には「韓国だって無実の若者をたくさん殺してきたじゃないか」とのセリフもある)。他にも現地の人々の表情など細かな点で気が配られていた。例えばお祈りの最中に気付かれないよう脇を通り抜けるという場面はどうしたって韓国お得意のゾンビものを彷彿とさせてしまうものだけど、最後に銃を持って立ち上がる人々の姿などでうまいこと非・人間感を退けていた。