ROCKS ロックス


APARTMENT by Bunkamura LE CINEMAにて観賞。2019年イギリス、サラ・ガブロン監督。

先の日曜日に「シルビーの帰郷」(感想)を見たところだから、冒頭ロックス(ブッキー・バックレイ)のママがハグして手を取って娘を送り出す姿に、位置こそ逆だけど、そうだ、「母親に向いていない女」はいるものだと思う(後にロックスの祖母がはっきりとそう言う)。「空いてるところに居るだけ」の無賃乗車も良い。

ロックスは15歳である。ある程度は弟の面倒も見られるし、ほんの少しならばお金も稼げる。だから弟と離ればなれになりたくない一心で公営住宅の隣人が連絡した福祉課から逃げ回る。学校の女友達らには泊まらせてもらうなどするが、15歳同士に出来ることには限界がある。加えて皆の家には両親がおり当座の困窮もないので、それ以上のことを口に出せない。助けること、助けられること、手を伸ばすことの複雑さについての物語だ。でも一番大切なのは皆の中にあるROCKSの気概。「一緒に行くよ」に「来なくて平気」と返す時のロックスの、嬉しさを隠し切れないあの顔!

ロックスが、トイレの個室の壁の隙間から顔を出して見守っている親友スマヤにタンポンの使い方を教えてもらう場面に、このタンポンは誰の物だろうと考えた。おそらくスマヤの、あるいは仲間の物かもしれない。チキンを誰かが買うというのに始まり彼女達は物やお金を共有している。そこには「ロックスの弟との時間」も含まれる。一方転校生のエマニュエルは弟との時間を共有しない(ロックスが彼女からお金を取ってしまうのは、むしろそのため…共有がなされてないためだと思われる)。宿題を教えてほしいというスマヤの頼みを母の不在で多忙なロックスが聞いてやれない場面には、余裕がなければ助け合えないことが示唆されている。

作中のイーストロンドンの公立学校では、教員の仕事は禁止事項を守らせることに始まる。黒い運動靴(スマヤの「エアマックス」)、サングラス、マニキュアなどに目を光らせその場で取り除かせる(あんなに短時間でさばけるわけがないと思ってしまうけれども・笑)。そこにも余裕の無さが表れているように思う。ロックスが手本を見せるダンスや調理、美術などの授業の描写が豊かで面白かった。