マダムのおかしな晩餐会



見終えてポスターを確認したらロマンティック・コメディを謳っていたけれどロマコメじゃない。分断は分断のまま。しかし喜劇には違いないし、一人の女がパワーを得てさわやかに終わる。


「ルブタンにサイズ8はない」(なくはないが、お前の履く靴はない)と言われ自分の靴を履かざるを得なかったメイドのマリア(ロッシ・デ・パルマ)は、夜中の12時に女主人(原題)のアン(トニ・コレット)に追い払われ裸足になり部屋に戻る。自分の靴でパーティに出たシンデレラは、自分のやり方で未知のステージを歩いた。転ぶだろうという女主人の予想を裏切り、他人を魅了さえした。


「あなたが面白い人間なら、なぜメイドをしているの」
「私がスペイン人の移民だからです」
「アルモドバルやバンデラス(!)はそんなことしていない」
「私は彼に愛されています」
アンには男の名しか頭に浮かばないのか実際そうなのか分からないけれど(いや実際そうなのであろう)、マリアはこの時、愛し愛されることを知り新しい段階に進んでいる。更なる段階も控えているけれど。


鍵となるのは、来るなり紅茶を飲むアンの義理の息子スティーヴン(トム・ヒューズ)。彼女の言う「食べ過ぎない、飲み過ぎない、話し過ぎない」の真逆でいるのはマリアのようでいて実は彼である。常に何かを頬張りお茶を飲み酒をくらって泥酔し、人を混乱させることを言う。それが逸脱できる存在…「小説家」なのだと言わんばかりに。義理の妹に「棒みたいな女は魅力がない」とキスをしてみせるこの人物は、女達の話においてなぜ男なのか?私としては、これを男にしたところに作り手の姿勢を感じた。