輝ける人生



早々に出るタイトル「Finding Your Feet」、イメルダ・スタウントン演じる主人公サンドラの「(夫のナイト爵位授与により)レディって呼ばれるのも悪くない」「夫は労働者(「手に職のある人」)じゃない」とのセリフ、まさに「手」を使っているチャーリー(ティモシー・スポール)の姿という冒頭からして先の見え切ったお話なんだけども、悪くない!ロマコメのツボを全て抑えている上に、この年代ならではの「もたもたしてる暇はない」ということをマッシュアップで、あるいは音楽が先導する強引なこの映画のやり方そのもので表しているから。


驚かされるのは、ティモシー・スポールが程よく、いやついぞなくかっこよく映っていること。被った帽子の角度から「修理屋」として使ってきた手指の器用そうな優しそうな具合まで実に見事で、私が同年代ならセクシーに感じるだろう。イメルダの方もどんどん輝きを増して、終盤には世界一の美女にしか見えなくなる。ロンドンの町も素晴らしくよく撮られていて、クリスマス前の買い物デートの場面の何て生き生きと楽しいこと。二人が中国の食材店をのぞきこむ場面で、サンドラはもう冒頭のような差別的な暴言は吐かないだろうと確信させられる。


姉のビフ(セリア・イムリー)とサンドラは共に社会運動をしていたが、妹がいわば体制側の男の子を妊娠したことで分断されてしまう。それがひょんなことからまた一緒にちょっとした(本当に、ちょっとした)社会運動をすることになるのが面白い。「私達(老人)にアイスバケツはもう無理だからね」とのセリフが可笑しい。ビフのファッションはとても素敵、部屋も素敵にぐちゃぐちゃで、サンドラが掃除してしまうと「どこに何があるのか分からない」と嘆くが、映画は片づけるのも悪くない、というふうな姿勢を見せる。その塩梅がいい。


似たような設定のダイアン・キートンブレンダン・グリーソン主演「ロンドン、人生はじめます」ではもっとはっきりと描かれていたけれど、この映画のボートにもたれての会話シーンを見て改めて、ロマコメで「結ばれる」二人というのは基本的にアウトサイダー同士なのだと思った。だから好きなんだなって。