海賊じいちゃんの贈りもの



こちらは「Fantastic Four」ならぬ「Fantastic Three」のお話だった。原題「What We Did on Our Holiday」を目にしたせいもあってか、見ながらずっと、(明らかに舞台は「現代」なのに)三人の子ども達の内の誰かが後に振り返っているような感じがしてしょうがなかった。
大人達を氷解させる、「色々あっても(人生の)最後には全て忘れる」というお爺ちゃんの言葉について、私はそう思わない、何十年も前の「些細なこと」をうわごとのように言いながら亡くなった人を知っているから。それでも全然、すてきな映画だと思った。


オープニングはさざ波の音、スコットランドの海の小舟でくつろぐ「お爺ちゃん」ゴーディ(ビリー・コノリー)。一転してロンドンの家にてまさに「どすんばたん」とやっている一家。この「対比」が、後にお爺ちゃんが実は舟にテレビを持ち込み競馬の中継を見ていることが分かると、余計に面白く感じられる。
ゴーディの誕生パーティにつき、息子の妻のマーガレット(アメリア・バルモア)が客の何人かは過食症だからと言い、夫のギャビン(ベン・ミラー)がそれを茶化すと、場面換わって子ども達が車での長旅の途中に自分がいかにゲロを吐けるか自慢し合っている。更に場面が換わって、ゴーディが病気により夜中に吐いている。こういう辺りも上手くて染み入る。


本作は「嘘」についての映画である。ゴーディは亡くなる寸前まで三人を楽しませる、あるいは自分も楽しむための嘘を言い続ける。お爺ちゃんに嘘も方便と教わった長女のロッティは、それでも自分で判断して、両親に「嘘ばかり言っている」と突きつける。
ラストシーンにおいて、子ども達の前で作り笑いばかりだったアビー(ロザムンド・パイク)は「別居はするけど、仲良くする」と言ってのける。この「結末」のすてきなこと。


たまたま前日に新しい眼鏡を買ったので珍しく掛けて外出したら、ちょっとした眼鏡映画でもあり嬉しかった。眼鏡を掛けているのはお爺ちゃんとロッティ、「大人」でも「子ども」でも無いケネス(「どちら」でも無い彼のみ、自らの「場」をよそに持っている)それぞれ馴染んでいる。
長女のロッティが作中一度だけ眼鏡を外すシーン、ラスト以外に心底の笑顔を見せるシーンにはああそういう時に、と思わされた。末っ子ジェスの描写も良く、岩場でよろけたところを捉えた何でもないカットなど素晴らしいし、動物を前に楽しい時にお姉ちゃんにぴたっとくっつく姿や興味が長続きしない様子など全て楽しく見た。