新作二本



ポール・シュレイダー監督・脚本作と知り見に行った「ラスト・リベンジ」は、すごく面白くはないけど、ニコラス・ケイジ映画としては満点に近いんじゃないかな?


エージェントの仕事にまつわる幾多の部分が「?」でありながら真面目顔で見られるのはひとえにケイジのおかげ、だけどシュレイダーぽくもある。適当さと真面目さの両立。「ずっと考えてたんですか」「一日一回だけだ…一日中だが」なんてセリフも、シュレイダー映画の主人公とケイジの個性がぴたりとはまって痺れる。


ニコラス・ケイジアントン・イェルチンイレーヌ・ジャコブの三人が初めて揃う場面でふと、この映画はキャストが全て少しずつずれているのではないか(「正解」の三人が他にいるのではないか)という妙な気持ちになるも、イレーヌにとある言葉を掛けるケイジの作中唯一の「過去を慈しむ」表情に、その思いは消えた。彼のああいう顔、久々に見た気がする。



▼あまり得意じゃないマイケル・マン作品だけどクリス・ヘムズワース主演、アンディ・オンも出るというのに惹かれて「ブラックハット」を観賞。これが案外よかった。


第一に音がいい。クリヘムが初めて電話でやりとりする場面の音遣いなど素晴らしくてうっとり。第二にアクションがいい。中盤の銃撃戦には胸躍った。最期に目にする「ビル」の、たったあれっぽちの画の抒情!第三に美しい画がたくさん。波紋がずるい。
惚れぼれするような手際の良さも随所に見られる。冒頭アトラクションにでもしたら面白そうなアレが延々と続いたかと思いきや爆発が起きると間髪入れず救急活動が始まっていたり、終盤二人が買い物してたかと思いきや家に帰っていたりと手品を見ているよう。こんなに手際がいいのになぜ映画は長くなるのか(笑)
タン・ウェイによる「ヒロイン」は大して「役」に立たないので始めなぜ居るのか分からなかったけど、地下鉄内でクリヘムに揺さぶられ、飛行機内であの顔を見せ、最早二人とも躊躇しなくなる、会話が無くなる、あのあたりからの彼女は最高で、映画もぐんぐん面白くなった。目当てのアンディ・オンについては、クリヘムと一緒のところを見られて胸が熱くなった、とだけ言っておこう(笑)


見ている時にふと「ラスト・リベンジ」と「ブラックハット」は日を開けてよかった、という思いが胸をよぎる。全然違う映画だけど同じフォルダに入れておくことになりそうだから、そういうの、続けて見るとだれちゃうもんね。「アメリカ人のお爺ちゃん監督による、主人公の仕事周辺の描写は適当だけど結構面白い映画」ってとこかな(笑)