かけがえのない人



ニコラス・スパークスものの新作(監督マイケル・ホフマン)は、例えばある部屋へ連れて行かれて、何やらすごい跳び箱を持ち出されて、あれこれ努力したけど跳べなかった!というのを見せられたようで、頑張ってる姿には心動かされなくもないけど、そもそもなんで跳び箱なんか持ってきたの?という感じ。やはりキリスト教のことが分からないとスパークスのことも分からないのだろうか(映画化作品は殆ど見てるけど著作は読んだことなし)


冒頭、肉体労働を終え、星空の下で一人、ホーキングの「The Grand Design」を読むジェームズ・マースデンミシェル・モナハンとの再会時には車を修理しており「こんな格好でごめん」とタンクトップ姿で汗を光らせて。なんだこの夢物語は…と思っていたら、高校時代のパートになり、彼が落ち着いて本など読めない環境で育ったと分かりぐっときた。同様に?「女の子は車が苦手」なんて描写、古すぎるだろ(92年のパートであっても)と思っていたら、それが女の子自身の「策略」であったと明らかになるのも面白かった。


基本的には、マースデンが手ずからの料理を前に「君と別れて21年間、君以上の女性はいなかった」と言ってくれるという映画である。そのうち「家庭を捨てられない君だから好きなんだ」「僕はいつまでもここにいる、君を愛してる」とか言い出す。まあ、ありえない話じゃない。生え際や髭に白いものが目立つマースデンは、白髪混じりの人間の中で現在世界一の可愛コちゃんじゃないだろうか?もともとポール・ウォーカーの役だったそうで、見てみるとやはりポールの方が合ってたなと思うけど、それでも。


映画を見ていると、「かっこいい男」を表現するコツが分かってくる。例えばこの映画のマースデンはカセットテープを車のデッキに入れた後にケースをシートに放る際、シートを一切見ない。これがいいんだなあ(笑/勿論「こういうキャラクター」の男性がするからいいのだ)ちなみにこの場面には大きな意味がある。「昔は何でもうまくいくと思ってた、そして実際にうまくいった」と言うモナハンに対し、彼が「自分でうまくいくようにするんだ」と答えてテープを掛けるのだ。このことについてもうひと押しあれば、冒頭に書いたような「お話のためのお話」という印象は受けなかったと思う。


主人公二人が38歳(原作が書かれたのは数年前?)、知り合ったのは高校生だった92年というので私と同世代かあと見ていたら、高校時代の彼が車で大音量で聴くのがレモンヘッズの「Into Your Arms」。同じ武蔵野館で見た、やはり同世代が主人公の「ヤング・アダルト」でも「It's a Shame About Ray」が流れたから(これはシャーリーズ・セロンが帰った故郷で、すなわち「現在」流れるのがポイント)やっぱりうちらの曲なんだな。


スパークスによる小説のタイトルは「The Best of Me」。作中のセリフにもあるように、互いに「あなたは私の最高の親友であり恋人」というのはいい、恋人は最高の親友でなければ。おそらく原作ではそのことにつき、もう少し詳しく描かれているのではないか?ともあれ現在の主人公二人に友達が居なさそうなのはポイントが高い(笑)