ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して



原題「The Big Year」とは、北米大陸において一年間に目にした野鳥の種類の数を競うレースのこと。時間とお金をつぎ込むため、多くの出場者にとってそれに挑む年は「生涯に一度のビッグ・イヤー」となる。
そんな夢追い人にジャック・ブラックオーウェン・ウィルソンスティーヴ・マーティンと聞けば見ずにはいられない。お下げ髪のアンジェリカ・ヒューストンなど、共演者も豪華。すごく面白かったわけじゃないけど、皆の顔を見てるだけで楽しい。


「これは実話だが事実ではない」…という冒頭のテロップ。最後まで観ると、そういうことかと思う。同様にそっか、と楽しくなるエンドクレジットの趣向もいい。
まず聞こえてくるのはJBの声、シメのナレーションも彼。鳥の声を「ロックだ!」と言ってのける、「バツイチで仕事も嫌い、俺には鳥しかない」、いつものように熱い男。「裏切られ」てしょんぼりしたり、おんぼろの乗り物に大荷物を抱えてきたりするのがほんとに似合う。久々に見た好きな女優、ダイアン・ウィーストが彼の「ママ・リムジン」。
そして探鳥界のスター役、オーウェンの登場はズーランダー式!(笑・見れば分かる)執着心が強く他人の邪魔が得意ってかつてのスティーヴも彷彿とさせるキャラだから、スティーヴの方はどんなかと思ったら、始めの「だから吐いてたのか」、嗅覚障害をいいことにゴミ捨て場で他人に食べ物を勧めまくる、などの場面で昔の面影を見せるも、その後は随分オトナ。家族もお金も信頼も持ちながら、自分なりに夢を実現しようと努力する。


「探鳥」の世界を垣間見られるのも楽しい。この「競技」(作中「アメリカ人は何でも競うんだから…」というセリフあり)に勝って得られるものといえば、専門誌への名前の掲載くらい。厳密なルールは無く、見た鳥の数は自己申告。(少なくとも作中では)「ズル」は一切無いようで、眼前の鳥も「もう見たやつだから」とやり過ごし、ライバルは陥れるオーウェンも、自らに嘘は絶対に付かない、という場面がわざとらしく挿入されている(笑)
探鳥家たちは「普通」の人が避けるような場へこぞって駆けつける。「フォールアウト」(鳥たちが地面に落ちる)を求めて嵐のもとへ、電気も携帯電話も通じない島へ。そうした「場」が見られるのも興味深いし、鳥の映像が「映画」ぽくなく、その場の皆が見ているそのまま、という感じなのがいい。


JBは「次のボスティック(オーウェン)に」「彼の精神を真似して」などと言ったり言われたりするが、探鳥について「これはhobbyじゃない、calling(天命)なんだ」とパートナーを説得しようとするオーウェンと、「僕の趣味の写真を見せるよ」と父親を元気付けるJBとでは、どっちがいいとかじゃなく、性分が違う。スティーヴもまたしかり。それぞれがそれぞれの道をゆくしかない。