最近観たもの


今年に入って観たけど感想残してない映画について、twitterのログから抜書き。


▼しあわせのパン
脱出装置で席から飛び出したくなるのをふんばって、最後まで観た。舞台がほぼカフェの店内、登場するのはいつもの仲間と客、というので吉本新喜劇に変換してみたり。一度だけ映る余貴美子の工房に「スキナコトヲ、スキナトキニ」とでかでか貼紙してあるなど、観てる人のためにならなきゃ、という精神が敷き詰められており疲れる。お言葉じゃなく物語を観たいのに。
最後の最後に、この世界では子どもは「コウノトリ」的に出来ると判明してびっくり。でも性的なものって脅威でもあるから、「一般的」な性の要素を排除した娯楽は必要だと思う。
ちなみに、予告の時点ではマイク・リーの「家族の庭」を思い出してた。いずれも、今の時代の「幸せ」とはパートナーと豊かな食生活って話だから。「恵まれた」者のところへそうでない者がやってくるが、そこからの展開は違う(笑)まあイギリスにだって本作みたいな作品はあるのかもしれない。


預言者
いわゆる「公園デビュー」って「刑務所の庭」だよなあと、くだらないことを思う。刑務所グラフィティ(←日本語的な意味)って感じで、楽しそうだなあ!と何度か思わされた。
主人公の「以前」が(「孤児」だという以外)全く語られず、「いいやつ」なのか「わるいやつ」なのか、何者なのか判断できないまま、開始数分で窮地に陥るのが面白い。彼が言葉を覚えたり勉強したりする場面が印象的で、まさに「刑務所に入ることで出来上がった」人間の物語。
ところで私は「マフィア」がらみの映画ってあまり楽しめない方なんだけど、本作を観て、何やってるか分からないからというのが理由の一つかもしれないと思った。あの偉そうな爺さんの「仕事」がさっぱり分からないので、話にいまいち入り込めず。


キツツキと雨
一人で朝食をとる役所広司が、テレビのニュースにいちいち振り返る。見やすい席は息子のもの。うちもそうだった、私が出て長らくたった今でも、一番いい席は空いてるな…と思いながら観た。
物語は、映画スタッフと木こりが互いに「本番」「枝打ち」という仕事用語を使うので相手に通じない、という場面から始まるんだけど、初対面の相手にそんな言い方するかなあ?と少し白けてしまった。でも、これが外国語の映画なら、そんなこと全然思わず見過ごしちゃうんだよなあ。自分がいかに外国語の映画をぼーっと観てるのか改めて分かって慄然とした(なんて、大げさだけど)。また他に気になったのは、映画スタッフがやたら「じゃま」という言葉を使うこと。いわゆる業界用語に近いんだろうか、それともたんなる本作のギャグ的センスなんだろうか?
主役二人が温泉に入る場面には濡れTシャツ「的」なものがあり、どうしても目が行ってしまったけど、あれはいいんだろうか。淀川長治の「あんなにセクシーなのに、男のものは見過ごされる」という言葉をまた思い出した。


▼TIME/タイム
全てが間抜けで、しまいには腹が立ってきた。「バトル」「強盗」なんて場面を、どうしたらあそこまでつまらなく見せられるのか逆に不思議。最後に開いた金庫の中身には、久々ってほどの脱力感を味わった。キリアン・マーフィーの瞳だけが異様に美しかったので、お代はそこに。
そのキリアンだけど、彼自身は素晴らしく、役柄も面白いんだけど、ラストにいきなりジャスティン・ティンバーレイクがセリフでお前ってこういうやつなんだろ、と説明してしまうのでびっくりした。想像はしてたけど、もっと当人の言動で見せてほしかったし、口にすることない。


メランコリア
手持ちカメラの映像に酔ってしまった。ぐらぐらし始めた途端に吐きそうになり、後は早く惑星がぶつかってくれとひたすら願うばかり。話が気になるのと、結構混んでたから席立ちたくないのとで、半分くらいは目をつぶることにして乗り切った。こんなの初めて。
大体、皆が一瞬で死ぬなら、楽しいに決まってる。ああいうシンプルな、いやそう決まったんだから!とでもいうような「終末」は好きだ。前半の「世界」そのものに苛々させられるおかげで、後半の「普通」さが際立つのは面白いなと思った。


おとなのけんか
冒頭のクレジットで舞台劇が元と知る。部屋から出ない息苦しさ、そもそもの「問題」が自分じゃなく「子ども」のことであるという足元のふわふわした感じ、が面白い。でも終了後、違う意味で楽しい映画で口直ししたくなった。
「治りうるものは『変形』じゃない」と言ってのける「弁護士」と、この世を憂う「作家」、羊として生きる「金物屋」、残るケイト・ウィンスレットの職業は何だったのか、見落としたのか分からない。「女」としといてもいいかも。
(…と書いたら、投資関係だと教えていただいた。そういやそう言ってた気がする)


▼ザ・レッジ
筋は通るし、映るもの全てに「意味」があるんだけど、それだけというか、肉がなく骨組みだけ、しかも大した骨組みじゃない、という感じ。登場人物の「語り」を回想シーンとして見せる映画って多々あるけど、こいつの話は長い!でも飛び降り自殺を思いとどまらせるためのやりとりの一環だからそれでいいのか(笑)最後にテレンス・ハワード演じる刑事が「(その重要なところを)もっと早く話してくれたら…」と言うので笑ってしまった。
それにしても、性的に惹かれる相手を「救い」たいという気持ちは、最も純粋で最もゲスい。「セクシーな唇だね」と言われたリヴ・タイラーが、「人妻の唇よ」という咎め方をするのが心に残った。セクハラ、というか尊厳を傷つけられたからじゃなく「自分が結婚してるから」ダメと考えるのかと。
パトリック・ウィルソンはそのままの(いつも通り「異様」な)役だけど、目のきらめきはすごかった。見ていてふと「エデンより彼方に」を思い出す。リヴ・タイラーは頭の弱そうな喋り方がはまってた。このカップルを後ろから見ると、腰のところがすごいボリューム。