キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー




「海を渡ってナチスをぶち殺したいか?」
「人を殺したくはないけど、悪人は嫌いです」


とても面白かった。「強さ」についてふと考えさせられる前半、ひたすらアメリカの馬鹿カッコいいを体現した後半、どちらもよかった。突っ込んだことは語らず、ただ滑らかに進んでいく物語が楽しい。
身長はどうなるんだろ?と思ってたら、変身後の第一声が「背が伸びたよ」だったので、気がきいてるなと嬉しかった(笑)


冒頭は、悪の将校役のヒューゴ・ウィーヴィングナチス帽の似合い様くらいにしか心惹かれなかったけど(脱ぐとがっかりさせられる/後半は帽子というかナチスどころじゃなくなるけど・笑)、クリス・エヴァンス演じる主人公のもやし青年、日本風に言えば「一寸の虫にも五分の魂」を持つスティーブが出てきて面白くなる。
ティーブは映画館で戦意高揚の宣伝フィルムに文句を付ける男をたしなめ、路地でぼこぼこにされる。「戦争」においては彼がいくら士気を高めようと何も出来ず、彼を痛めつけた相手の方が役に立つかもしれないんだから面白い。もっともスティーブがなぜ「国のため」を思うのか、彼にとって「悪」とは何なのか、全く分からないけど、スタンリー・トゥッチ演じる博士によれば彼は「善意」の持主なので、それが何かに従ったり反発したりする、ということなんだろう。


ティーブがテストを受けるために送られた訓練場では、女性将校ペギー(ヘイリー・アトウェル)がハートマン軍曹の一億分の一程度の迫力で兵士をしごいている。うち一人が「イギリス人」であることを持ち出し彼女を馬鹿にすると、拳でもってぶっとばされる。するとその場はおさまり、皆は彼女に敬意を払うようになる。この話において、ペギーが「強い」必要ってそう無いと思うんだけど、なぜ彼女は腕力を備えてるんだろう?と考えた。しかし例えば私だって、「社会」の中じゃなく、単に誰かと対峙しているのであれば、相手が「男」であっても、自分の方が「強い」という確信があれば、全然怖くない。結局そういうことなのだと思った。
後にスティーブもペギーに対し「美人なのになぜそんな仕事を?」などと失礼なことを言い、「女性と話したことがないのね」と返される。もっとも彼の場合は女性と接したことがないため女性について考える機会もなかったわけで、心根は「素直」だからペギーも好感を抱く。そのへんは上記「BLITZ」のステイサムと同じか(笑)


ティーブが血清を打たれ超人になると、話は転がり始める。例えば変身直後のスパイダーマンは自由自在に飛び跳ねて自分の能力に慣れていくが、本作に「遊び」はない。スティーブはいきなり「国のため」に働く。またこの捕物は、恩人である博士を殺されたことへの復讐も兼ねている(もっとも二人の間にそれほど「絆」があったようには感じられないけど・笑)。その活躍により「キャプテン・アメリカ」として祭り上げられる、国債を売る広告塔となり人気を博す(このくだりの、一つの価値観しか認めない狂気がすごい!)、「現地の兵士」には笑い飛ばされ「コーラスガール」などと言われる、秘かに訪ねてきたペギーに励まされる、捕らえられた友を助けに行く、仲間を得て真の「キャプテン」になる。この流れがすごく上手くて楽しい。
もっとも楽しいのは「流れ」であって、戦闘シーンそのものは大したことがない。私はそちらにあまり興味がないので楽しめたのかもしれない。しょぼいダースベイダーみたいな格好した敵の軍団と、キャプテン率いる有象無象ぽい兵士たちがごちゃごちゃするだけ。それまで座ったり立ったりしてるだけだったトミー・リー・ジョーンズもいきなり活躍するので驚いた。最初に挙げたセリフから、なるほど〜だから武器が盾なのか(人を殺したくないから防御するのみなのか)と思ってたら、全然殺しまくってるのが可笑しい。


一番笑えたシーンは、海に落ちた少年の「僕はいいから!」、初めて新聞に載った時のスティーブの写真(イラスト?)、爆弾に書いてある地名、この3つで争うことになるかな?ってこれら全て、意図された笑いじゃないけど…