4デイズ



公開初日、都内唯一の上映館である銀座シネパトスにて観賞。かなり空いていた。
監督は「戦争のはじめかた」のグレゴール・ジョーダン。検索したらオーストラリア出身で、ヒース・レジャー主演「ケリー・ザ・ギャング」なんてのも撮っていた。内容は覚えてないけど面白かった記憶はある。


「国内の3都市に核爆弾を3つ仕掛けた、4日後に爆発する」
マイケル・シーン演じる「イスラム教徒のアメリカ人」が自分撮りしている映像に始まる、冒頭10分ほどにまず引き込まれる。キャリー・アン・モスが街の雑踏で子どもと微笑み合うも、とある理由でその母親に警戒される。彼女はFBIの対テロ捜査官。職場の仲間の顔付きややりとりに、なんとなく70年代ぽいものを感じる。場面が替わり、サミュエル・L・ジャクソンとその妻の「普通」ではない家に、銃を構えたFBIの職員がやってくる…


原題は「Unthinkable」、曜日ごとに章に分かれてはいるけど、「4日間!」という事にものすごく意味があるわけじゃない。一言で言えば「アメリカがテロリストに『尋問』で挑む」話。もっともその面白さは、尋問によるサスペンスというより、アメリカにおける色んな立場の交錯、縮図を見るところにある。


サミュエル演じる尋問スペシャリスト「H」は、始めの方こそ「常人とは違う勘のよさ」などを見せつけるが、スーパー仕事人というわけではない。いわく「俺のほうが囚われてるんだ」。組織に属さない「鼻つまみ者」と、彼が「唯一良識を持ってる」と認めるブロディ(モス)の仕事ぶりが交互に描かれる。
開始早々、Hがブロディに「君が飴で俺が鞭の役だ」と言うので拍子抜けした。とはいえ日本じゃ飴と鞭という「言葉」が手垢にまみれすぎているだけで、やり方としては実践的なのかもしれない。「切り札」にも驚いたけど、そちらも実際、そういうものなのかもしれない。


現場には更に、ザ・軍人といった感じの上官が「核爆発よりましだろ」「こんなやつの言うことが聞けるか」などとのさばっている。「彼はアメリカ人ですよ!」「国籍を剥奪したからいいだろ」というやりとりにはぎゃふんとさせられた(笑)
しかしこれが「普通」の感覚なんだろう。そう、作中では「普通」という言葉もフューチャーされる。


警察っぽい職業に就く多忙な女性、というといまだにヘレン・ミレンの「第一容疑者」を思い出してしまう。本作のキャリー・アン・モスは毎日野暮ったい同じスーツを着、トイレの場面では、ヘレンのように化粧直しするわけじゃなく、単に一息つくだけ。
女といえばHの妻が、自分たち夫婦の過去を話す場面も印象的だ。後にHは「あいつはすぐ話したがるからなあ」と言う。「でも最後までは話さなかったろ?」。なぜすぐ話すのか、なぜ最後まで話さないのか。


もし「組織に属さない」者が居なかったら、テロリストに「愛する」妻子が居なかったら、この話はどんな風になるだろう?と想像した。この二つの要素はいかにも「映画的」だから、それがなければ、より「現実的」なんじゃないかと思ってしまうから。