キャデラック・レコード〜音楽でアメリカを変えた人々の物語〜


40年代の終わりに誕生した「チェス・レコード」の興亡を描いた作品。創設者レナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)とマディ・ウォーターズジェフリー・ライト)を中心に、リトル・ウォルター(コロンバス・ショート)、チャック・ベリーモス・デフ)などが登場する。



「ブルースは不条理を歌うものだ」…とは作中のマディ・ウォーターズの言。英語で何と言ってたか分からないけど、哲学的な意味でなく、黒人の立場のことを指してるんだろう。
登場人物もエピソードも多いので、全ての描写がさらっとしており、レナードとミュージシャン達の間の溝が深まっていく過程がよく分からなかった。中盤、実の母親を亡くしたウォルターにマディが言葉を掛ける場面のちょっとした説教臭さや、「レニもガールハントに精を出していた」というナレーション→エタ・ジェイムス(ビヨンセ・ノウルズ)登場、というようなユーモア?センスなどもあまり好みじゃない。でも音楽が色々流れて楽しかった。


ビヨンセの存在がかっこよくて見とれた。私はエタ・ジェイムスについてよく知らないんだけど、作中披露されるのがいずれも「恋に破れた」女の心情を歌ったものだったので、ブルースってそういうものなんだろうか(そういうのが好まれたんだろうか)?と思った。ビヨンセの声ってどうしても「現代」っぽく聴こえて、ああいう歌詞にはそぐわなく感じる。
登場人物の多さに加え、作中わりと時間が経ってから登場することもあり、彼女についての描写はそれほど深くない。そのため、薬物に倒れたエタと、介抱しに駆け付けるレナードとの暖呂前でのシーンは唐突に感じられた。でも、二人の顔がドアップで延々と映るだけのその場面が、一番印象に残った。少ししか関わりがなくても、(性的な意味でなく、もしくは身体的でなくてもそれ以上に性的な)濃密な関係ってあり得るから、あれはそういうことなんだ、と勝手に解釈すると、心動かされた。