処刑剣 14 BLADES


今年劇場公開された他のドニー・イェンものと比べると、「イップ・マン」の体温上昇度にはかなわないけど、「孫文の義士団」よりは一万倍面白かった(あれはドニーものじゃないか)。



冒頭、実在した「錦衣衛」(原題)の説明。彼らは明王朝の時代、反体制派を抹殺してきた秘密警察。最も優れた者には指揮官として「青龍」の称号と「大明十四刀」が授けられた。ドニー演じる青龍は、皇帝の証をめぐる陰謀に巻き込まれ、追われる身となる。


孫文の義士団」では人情話に飽きたり無駄死に疑問を抱いたりしてしまったけど、こちらはガンガン行くだけの内容だから観易い。ただし映画独自の設定「大明十四刀」始め、「からくり」というにはわびさび皆無のオモシロ小道具が多すぎて、気がそがれてしまう。
いちいち「参上」する「砂漠の判事」(ウーズン/ジプシー風というか綺麗なジャック・スパロウ風の腹出しファッションがいい)がブーメラン刀で敵を仕留めるのにうっとりしていたら、その次のシーンでドニーが「机に乗る」だけのカットがあまりにかっこよくてびっくりした。そういうシンプルな「動き」がもっと見たいんだな。道具もヌンチャクや棒くらいならいいんだけど。


「恋愛もの」としては、大げさだけど最近観たものの中で一番気に入った。作中随所で、ヒロインのヴィッキー・チャオと同じ表情(もちろん「顔」じゃない!笑)になってしまった。
ドニーと「人質」ヴィッキーの旅は、躾を受けていない彼に箸の使い方を教えたり、夜中に布団掛けようとした所を誤解して殴ったり、壁一枚隔てて入浴したりとベタな出来事の連続。「殺人マシーン」の彼は、あくまでも「目的」のために彼女を「利用」することもあるが、肝の座ったヴィッキーがその場を切り抜けていく様が痛快だ。「騙されても、騙されてなくても、彼の言うことを聞く」「希望を持つことは幸せに繋がる」という心持ちが甘美でいい。それは依存じゃない、自由な意思なのだ。


冒頭、友情出演のサモハンが登場。足切りの刑に処された親王という役柄なのでアクションはないけど、一瞬、上半身の素早い動きを見せる。彼がラスボスだったら最高なんだけど(そういう役どころだし)、もうお爺ちゃんだし、いつまでもそういうわけにいかないよなあ。