再会の食卓



ワン・チュアンアン監督作。上海に暮らす女性のもとに、生き別れの元夫が台湾から訪ねて来る。40年ぶりの再会。しかし彼女には、長い年月を共にした夫と家族があった。


観終えてふと、昨年の「ウィニングチケット」(感想)を思い出した。つまらないわけじゃないんだけど、とにかくストーリーを前面に感じてしまったというか、その特異性ばかりが心に残ってしまったというか、そういう映画ってあるものだ。


エンディングに流れる曲の歌詞「池の蓮、どれもつがいで幸せそう」というのに哀しくなった。国は「二人じゃなきゃいけない、家庭を持たなきゃいけない」と教育しておきながら、いざとなったら簡単に引き離すんだから。


舞台となるのは上海の高層ビルのふもと、昔ながらの共同住宅。ユィアーと夫は近々立ち退き料をもらって出て行かねばならない。作中映るのは、夫婦の寝室と、何とか客人を泊められる狭い部屋だけ。炊事は「共同台所」で行い、大きな卓を使う際は路地に出す。建物の合間に干される衣類や近所の市場など、いわゆる「庶民の暮らし」がくどいほど描し出される。
空はいつも曇り。台湾からの帰郷団は揃いの帽子でバスの中、ガイドの話に合わせて右へ左へと首を振るが、窓の外はおぼろげでよく見えない。観光に出ると、行く先々で「これは世界第何位、アジアで第何位」といったアナウンスが流れている。


ぱっと見じゅうぶん幸せそうなウィアーが、元夫に「この数十年、ただ生きていただけ」と告げる。一方、国民党軍兵士の妻だった彼女と一緒になった現夫は出世を逃し、「食べなければ、節約しなければ」と自分を鼓舞しながらやってきた。「離婚」の朝、一人食卓でお粥に添えるパンを口に運ぶ姿が切ない。
それにしても、私はあれくらいの歳になっても恋愛していたいけど、ひとまず健康でいなきゃ(その努力をしなきゃ)と思った。


ユィアー役は、最近では「シャオ夫人のお葬式大作戦」(最後まで観ると、そのまますぎる邦題に唖然とする・笑)のシャオ夫人を演じていたリサ・ルー。夫役の二人も、とてもいい顔をしていた。