バンク・ジョブ


「イギリス最大の強奪事件」を基に作られた作品。
1971年のロンドン。中古車店を営むテリー(ジェイソン・ステイサム)は、幼馴染のマルティーヌから銀行の貸金庫破りの話を持ちかけられる。借金に追われる彼は悩んだ末に仲間を集めるが、それは王室スキャンダルに関わる罠。様々な事情が絡み、彼等は政府や警察、裏社会のボスなどに追われる身となる。



主人公一味を追う男がある男に「驚いたことに全員素人だ」と言うように、テリー始めメンバーは皆そこらにいる普通の男、かつての小悪党。仲間に加えたトンネル堀りのプロに道具の使い方を教えてもらい、びびるシーンが可笑しい。
登場時のジェイソン・ステイサムはくたびれたおやじといったふう。酒場に昔の仲間を集め「死ぬ前に一度はでかいことをしたい」「モーツァルトは何歳で作曲し始めたと思う?5歳だぞ」などと誘う姿がバカっぽくて可愛い。しかし窮地に陥ると俄然頼れる男になるので、観ていて安心だ。そして物語は、各々にとってのミスや偶然、運の積み重ねで流れていく。
唯一のアクションシーン…勿論ジェイソン・ステイサムが複数の相手をぶちのめすシーン…がぴりっと効いており、カッコよくて見もの。頭突きにはああいうアタマじゃなきゃと思わせられる。


手練れのマダムが言うように、貸金庫とは「内容を知られずに預かってくれるところ」。最後のテロップによれば、ほとんどの顧客が盗難品を申告しなかったそうだ。
作中では無機質に並ぶロッカーのような金庫の中に、現金や宝飾品、金の延べ棒などの他、ワインや下着なども入れられている。ドリルでひとつひとつ鍵を壊し、大騒ぎしながら中身を出していくシーンが楽しい。


事件が警察に発覚した原因は、一味の無線を一市民が傍受していたこと。私は始め、この男はたんなる無線マニアでなくMI-5の一員か何かかと勘違いしていた。休日の夜なのに整えた髪、ぱりっとしたカッターシャツで無線機の前に座っていたから。かつて「ワル」だった中古車店主のジェイソン・ステイサムも普段からスーツを着用しているし、当時のイギリスってそういうふうだったのかなあ、と思う。


とある事情から貸金庫破りにテリーを誘う「ゴージャス」なマルティーヌは、シャーロット・ランプリング風のしぶい美女。お気に入りのテリーに対し、控え目にアプローチする。一方庶民的なテリーの妻は、事件を知って、まずはマルティーヌとの仲を取り上げ「尽くしてきたのに!」と責める。このあたりの対比はベタすぎると思ったけど(笑)女優さんははまっていた。
ポルノ王役でデヴィッド・スーシェが見られたのも良かった。あのクスリは思わせぶりだったなあ?