復讐捜査線



「大丈夫だトーマス、警官を襲ったやつは必ず捕まえる」
「誰が襲われようと事件は事件だぞ、何様のつもりだ」
「議論するつもりか?相手になろう」



めちゃくちゃ面白かった!体温&心拍数上昇度は今年のベストワン候補。メル・ギブソンの8年ぶりの主演作だそうだけど、これが最後の主役になってもいいほどの良品。


ボストン警察に勤めるトーマス(メル・ギブソン)は、娘のエマを久々に一人暮らしの家に迎える。体調のすぐれない彼女を病院に連れて行こうとした時、玄関先で男がこちらめがけて発砲。エマは彼の腕の中で息を引き取った。


映画は「娘」の思い出の映像から始まる。コーデュロイのジャケットを羽織ったメル(この後、彼はこの服を二度と身に付けない)と成長した彼女との駅での再会、不穏な兆候、そして雨。「事件」まで10分くらいか。この時点で手早く無駄なくツボを押され胸が高鳴る。事件後、娘の血を拭き取ったタオルをグラスにそっとしまう、遺灰を持って冒頭の海岸に出向くなどメルの「悼み」の描写もとてもよく、物語にずぶずぶ入り込んでしまう。


適度な量のアクションシーンは、近年屈指の美しさ。抑制の効いた銃と車の使い方がとても好み。メルの動きも、大立ち回りから「相手の車のドアを開ける」に至るまで素晴らしく撮れている。中盤の、満を持した発砲シーンのかっこいいこと!公衆トイレを利用し追手を巻いて逃げるくだりも、カーチェイスってんじゃない、ただ車を駆るだけの映像に魅せられた。
アクションばりばりというわけじゃないけど、メル演じるトーマスは頭脳も肉体も完璧といっていいほど強い。終盤、殴られた男が吹っ飛んでく場面には笑ってしまった。振り向くと誰かが背後に…などの「ぎゃ!」場面も目に余るほど多いんだけど、私には愛嬌、アクセントに感じられた。


どこかで見かけた気がするけど名前は知らない、という類の役者による激渋おやじたちの慎み深い触れ合いも見どころ。会話の端々に、何かというと「子どもがいる/いない」という要素が出てくる。得体の知れないレイ・ウィンストンが「お前、家族はいるのか?」と聞いてから、わざと…というラストにはぐっときた。


「巨悪」の内容こそタイムリーだけど、扱い方には少々古臭い面も見られる。でもアクションと絵面で全然カバーしてるように思われる。マスコミのちょっとした取り入れ方も良かった。
海岸で違灰を撒きながらの「すぐに行くから」、役員室?で突きつけられる「どんな気分だ?」などのセリフが回収されるのも快感だった。