狼たちの処刑台


狼たちの処刑台 [DVD]

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ケイン様の魅力爆発の一作。老人ハリー・ブラウン(原題「Harry Brown」)が、不良どもに制裁を下す。
ドラッグ売買や銃の発砲、盗難事件などが多発する地区。団地に一人住まいのハリー(マイケル・ケイン)の日課は、意識のない妻の見舞いと、唯一の友人とのチェス。しかし近所にたむろする不良たちのせいで妻の死に目に立ち会えず、友人も命を落とす。


ジャケやタイトルから想像されるようなスーパー爺さんものではない。暴力に満ちた非情な世界において、一人の老人がその頭脳と肉体を使って「処刑」を行う、極めて「現実的」な物語。ストーリーはしっとり進むが、要所ではアクションもサスペンスも味わえる。
ハリーは元海兵隊員。訪ねてきた警部補(エミリー・モーティマー)とのやりとりに、頭の良さが分かる。銃の知識も、度胸も冷静さもある。しかし足取りはもたつき、少し動くと息があがる。そんな条件での戦いだ。


紅茶とマーマイトで始まるハリーの一日。様々なものを目にし、思い悩むケイン様の表情がたっぷり楽しめる。お墓にキスするシーンなんかもいい。
妻との馴れ初めを語るセリフに若かりし頃の姿が、海兵隊との言葉を聞けば、軍服着てたあの映画この映画が思い浮かぶ。それだけでも楽しい。歴史を湛えた横顔のあごのたるみは、まるで鍾乳洞みたいだなと思った。