ブンミおじさんの森



タイのとある森。農園を営むブンミは、死期が近いことを感じ、亡き妻の妹ジェンを呼び寄せる。やがて彼らの前に、妻の幽霊や、数年前に行方不明になった息子が現れる。


映像には魅力があった。映画って不思議なもので、それじゃなきゃダメって場合がある。脚の悪いジェンが盆を手に地下室への階段を下りるシーンの美しいこと。なぜだか分からない。
多くのシーンにおいて「手順」をうるさいほど長々と捉えており、そういうのを見るのが好きな私にとって、ブンミの透析を行う使用人や妻の手際なども面白かった。


しかし、全体的にはいまいちぴんとこなかった。好みの問題かな。テラスのテーブルで食事中、妻の幽霊と、姿の変わった息子がそれぞれ違う登場の仕方をして、空いた椅子に座っていく展開なんて面白いけど。
ブンミは「人間でも動物でもなく、男でも女でもない」存在について語る。死んだ後も生きた者に会いに来る者もいれば、そうしない者もいる。森の中ではボーダーが消え、混沌がある。「死期が近いことを察して精霊や動物が集まってくる」というのは、生と死のどちらでもある存在の「匂い」を嗅ぎつけてやってくるってことなんだろうか?それならば、そうでない人間は何なのか?またそうした(ボーダーレスな)場で「美醜」の感覚があるというのもよく分からない。
私の知識不足を差し引いても、仏教や輪廻転生へのこだわりはさほど感じられなかったけど、ジェンの甥のトンがとあるものを見るラストシーンには、「映画」表現への強いこだわり、メッセージを感じた。


伝統職?にある男性の肉体がやたら強調されている(ように見える)。「しし」って感じの肉付きで美しい。