ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館



舞台は19世紀末のイギリス(…であることが、「コナン・ドイル、亡霊の存在を信じる」との新聞記事で分かる)。「男やもめ」の弁護士アーサー(ダニエル・ラドクリフ)は、とある女性の遺言書を探す仕事を命じられ田舎へ赴く。しかし訪れた村でも屋敷でも、不可解な出来事に見舞われるのだった。


「ネタバレ」になっちゃうから詳しく書けないけど、この映画(「原作」ってことになるのかな)は、「亡霊とその相手において、与え合うものは様々」という話だ。それが面白いなと思った。


居心地悪いどころじゃない屋敷に通い詰め、当初の目的である仕事そっちのけでうろつくアーサー。しかし、俺は負けない!と頑張ってるわけでも、恐怖でくぎづけにされてるわけでもない。「亡くなった妻の気配を感じる」彼は、「亡霊」の存在を確信したいのかもしれない。手に持つ斧がろうそくに変わるのは、そうした心の表れか。
ダニエル・ラドクリフの(私が抱いてる)イメージからか、何となくそこに居るだけ、という感じ、もっと言ってしまえば「鈍感」な感じもする。そういう主人公もいいなと思う。


ロンドンから田舎へ向かう、とても素敵な列車の中で、アーサーはデイリー氏(キアラン・ハインズ)と出会う。妻を亡くした青年と長年妻と暮らす初老の男、「亡霊」に対する考え方も違うけど、妻への愛が共通項だ。電気も電話も使えないような環境において、第一のクライマックス?では資産家であるデイリー氏の、村で唯一の「自動車」が活躍するのが楽しい。
「亡霊」の描写は単純ながら印象的、とくに最後の寝室での描写(よく言われることだけど、親子別々に寝てるからこその場面だよね・笑)では快感に近いものを味わった。人形がやたら出てくるのには飽きちゃったけど、猿の目玉をよぎるろうそくの火、なんてのは面白い。
アーサーが「彼女」の書いた手紙を読むと「彼女」の声で朗読されることや、アーサーを見る者(=「彼女」)からの画が何度も挿入されることから、程よく「彼女」に心が沿うのもいい。


残念だったのは犬の扱い。屋敷にアーサー一人(+「亡霊」)という場面が大部分なので、犬の動きや泣き声が必要とされたんだろうけど、本当に都合のいい時しか居ないから、ちょっと寂しく感じた。